「もう一袋あっても良かった」
平日は、朝にお昼ご飯用のおかずを作る。それは、長男がお弁当をもっていくので、そのためのおかずも兼ねている。
ある日のおかずは、料理本から「もやし＋牛肉のガーリックバターｰじょうゆ炒め」を選んだ。
もやしは切らずにすむので、手早くできるという意味では便利な食材なのだが、ひげ根を取るのがおっくうだ。朝起きてからは、そんなことしたくないので大概は前日にひげ根を取る。
今回は２袋。夕飯の支度時に１袋仕上げた。
食事をしてから、もう一袋をしようと冷蔵庫からもやしをとりだした。テーブルを片付けて、袋を開封した。
向かいにいた長女が、新聞広告を広げて、「ちょうだい」と言った。
最初何のことかわからなかった。
開封したもやしを2人の間に置くと、長女もひげ根は広げた広告上に、もやしはボールの中へと、ぽいぽいしだした。
2人無言で作業する。もやしのひげ根とりは、基本好きではない。いつもは、「なかなかへらへんなあ」と思ってするのだが、ひげ根のついたもやしが、あたりまえだが普段より早く減っていく。
いつもは「まだまだあるわ」、と思うのに、今日は「もう、こんだけしかないわ」
もう、終わってしまう。最後のひとつまみをボールにいれた。
「ありがとう」
長女は、多少はにかんだように笑顔を返す。
