歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p030(no.111-115)
No.115
Subgingival debridement of periodontal pockets by air polishing in comparison with ultrasonic instrumentation during maintenance therapy.
Wennstrom JL, Dahlen G, Ramberg P.
J Clin Periodontol. 2011 Sep;38(9):820-7.
サポーティブペリオドンタルセラピー期間中において、歯肉縁下のエアーポリッシングによる根面デブライドメントの臨床的および細菌学的効果と治療時に感じる不快感を、超音波治療と比較して評価することである。
慢性歯周炎治療を受けた20人のリコール患者を対象に2ヶ月間のスプリットマウスデザインで、この臨床研究がおこなわれた。四分の二顎にあるプロービング深さ(PPD)が5-8mmでプロービング時出血(BoP+)部位を、(i)特別にデザインされたノズルを用いてグリシン粉末/エアーポリッシング処置をおこなう群か(ii)超音波治療群かに、ランダムに振り分けて歯肉縁下のデブライドメントをおこなった。ベースライン時、処置14と60日後に臨床パラメーターを評価した。デブライドメント直前、直後と2および14日後に歯肉縁下サンプルの細菌学的解析がおこなわれた。
両治療群ともに治療直後と2日後における歯周炎関連細菌種の有意な減少と、2ヶ月後におけるBoP、PPDと相対アタッチメントレベルの有意な減少がみられた。診査のいかなる時点においても処置群間に統計学的な有意差はみられなかった。患者が感じる治療時の不快感は超音波デブライドメントよりもエアーポリッシングの方が低かった。
この短期間研究から、SPT患者での中等度から重度ポケットの歯肉縁下エアーポリッシングおよび超音波デブライドメント処置間には、臨床的あるいは細菌学的成績に関連ある差はみられないことが示された。
(私の感想など:昨年の論文だが、埋もれて取り上げていなかった。2012年の似たような論文をno.103に出したので、まあいいやと思っていたが、やっぱり登場させた。何故なら19日札幌であった春の歯周病学会でWennstrom先生が特別講演をされていたからだ。
SPTで繰り返しおこなうメカニカルインスツルメンテーションは根面にダメージを与える。このエアーポリッシングは、根面へのダメージが少なくてよいのだが、4mm以下では根面の60%がクリーンにできるが深くなると40%に低下する。今回新しいノズルが開発されたので、検証とあいなった。用いているのはEMS社Air-Flow
perio powderとPerio-Flow Nozzleで、対する超音波スケーラーはpiezon master400だ。
臨床的あるいは細菌学的効果に関して、エアーポリッシングと超音波スケーラーはこの研究では同等といってよいであろう。細菌学的検索では、どちらの処置をおこなっても処置後減少した細菌は2日まではおとなしくしているのだが(減少したまま)、14日には術前レベルにまで回復している。しかし、BoP+部位の割合は14日および60日後まで低下したまま、PPDも同様に減少したままだ。なんでだろうね。考察では、術直後から生じる菌数の低下、炎症の消退やポケットの減少傾向がポケット内の細菌叢に影響を与えて、60日後までも臨床改善傾向が続くのであろうと述べている(ちょっと腑に落ちないところもある)。60日後の細菌検査がなされていないのが悔やまれる。
患者の不快感が少ない結果だが、他の論文でも指摘されているように使用後懸念される有害事象は気腫である。後遺症なしに4日以内で消退するものだ、とは述べられているが、腫れられたら開業医ではちょっと嫌だろう。今回のノズルジェットは鉛直方向よりも側方(つまりポケットへ挿入すると根面側)へ気流圧がかかるようで、その圧も小さくなっているようだ。
Wennstrom先生は革新的な方法だとはおっしゃっておられたが、どうせなら効果が従来法を上回って欲しいな。)
エアーアブレイシブ、慢性歯周炎、非外科的、歯周治療
(平成24年5月20日)
No.114
Prevalence of peri-implant diseases. A cross-sectional study based on a private practice environment.
Mir-Mari J, Mir-Orfila P, Figueiredo R, Valmaseda-Castellon E, Gay-Escoda C.
J Clin Periodontol. 2012 May;39(5):490-4.
この研究の目的は歯周治療メインテナンスプログラムに登録している開業医患者におけるインプラント周囲炎の罹患率を決定することである。
2010年1月から6月まで、歯周治療メインテナンスプログラムのためにデンタルクリニックに通院し、口腔内にインプラントのある患者を対象に横断的研究がおこなわれた。負荷をかけて少なくとも1年以上(期間:1-18年)のインプラントが含まれた。インプラント周囲炎の患者単位の罹患率解析がおこなわれた。加えてインプラントは次のカテゴリーに分類された:健康、臨床的安定状態、粘膜炎、インプラント周囲炎である。
全部で245人患者(964インプラント)が解析された。インプラントと患者単位のインプラント周囲炎罹病率はそれぞれ9.1%[95%信頼区間(95%CI):7.5-11%]と16.3%[95%CI:12.2-21.5%]
であった。
研究対象となったインプラントの21.6% [95%CI: 19.1-24.5%]がインプラント周囲粘膜炎であり、患者は38.8% [95%CI:
33.3-45.4%] が粘膜炎に罹患していた
。
歯周病メインテナンスプログラムに登録している開業医患者の中でインプラント周囲炎罹患率は12%と22%の間にあると推測された。患者の おおよそ40%が粘膜炎であった。これらの罹患率は大学受診の被験者を対象とした報告と同様であった。
(私の感想など:インプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎の罹患状況の報告にはかなりの幅がある。その大きな理由として、インプラント周囲炎の診断、定義がはっきりしていなかったことがあげられる。罹患率の調査には横断的な研究が適しているのだが、その種の報告も多くない。大学ベースの研究が多くなるのだが、開業医ベースの研究も必要であろうということで、今回の報告がなされている。
過去の報告では218人調査で16%の患者がインプラント周囲炎、別の研究ではインプラント周囲炎とインプラント周囲粘膜炎がそれぞれ11.2% と44.9%と報告されている。
今回の研究対象は歯周病メインテナンスプログラムに参加している患者である。従ってプラークコントロールも良く、インプラント周囲炎リスクの低い患者群であろう。またフォローアップ期間をみても、期間が長いからといって必ずしもインプラント周囲粘膜炎やインプラン
ト周囲炎の罹患率が高いわけではない(横断的なデータではあるが)。著者らも指摘しているように、コンプライアンスの低い集団ではインプラント周囲炎罹患率は高くなるであろう。
「臨床的安定状態」を分類項目に掲げている。インプラント周囲粘膜に炎症があって、骨吸収も有る場合はインプラント周囲炎。粘膜に炎症はあるが、骨吸収のない状態がインプラント周囲粘膜炎だ。そして、粘膜の炎症もなく骨吸収もなければ、健康な状態だ。「臨床的安定状態」とは、インプラント周囲粘膜に炎症はないが、骨吸収のある場合のことだ。この研究結果では、臨床的安定状態の骨レベルは2.8±1.1で、インプラント周囲炎の3.0±1.4とほぼ同等だ。両者がこの後どう変化するのか、残念ながら横断的研究ではわからない。)
合併症、歯科インプラント、インプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎、歯周メインテナンス
(平成24年5月15日)
No.113
A nationwide population-based study on the association between chronic periodontitis and erectile dysfunction.
Keller JJ, Chung SD, Lin HC.
J Clin Periodontol. 2012 Jun;39(6):507-12.
後ろ向きケースコントロール研究デザインにて、台湾における全国的規模の集団ベースデータを利用し、慢性歯周炎(CP)と勃起不全(ED)との関連を検索することが本研究の目的である。
我々はケース群としてED患者32,856人とコントロール群としてランダムに選別された162,480人を同定した。
EDと過去にCPと診断された既往との関連性を調べるために条件付きロジスティック回帰がおこなわれた。
サンプリングされた患者のうち、24,294人(12.3%)は指標とした日より以前にCPと診断されていた;ここには8,825人のケース(ED患者の26.9%)と15,469人のコントロール(比較コホートの9.4%)が含まれた。患者の月収、年齢、地理的在住場所、高血圧、糖尿病、高脂血症、心血管系疾患、肥満とアルコール中毒/アルコール依存に対して補正して検討し、ED患者はコントロール患者よりも指標日以前にCPと診断されていた割合が高かった(OR=3.35、CI=3.25-3.45、p<0.001)。加えて、その関連性は30才未満集団(OR=4.54、CI=3.81-5.40)と69才以上集団(OR=4.84、CI=4.35-5.39)でより強かった。
本研究からEDとCPと診断された既往歴との関連性が示された。
(私の感想など:なんで歯周病とEDなんだ、といぶかる向きもあろう。イントロをみる。数多くの臨床的疫学的研究が、慢性歯周炎と心血管系疾患との関連を示している。そして心血管系疾患がEDと関連し、全身的炎症、酸化ストレス、内皮細胞の機能障害などが慢性歯周炎とEDに共通した病態生理学的因子であるとことが示されている。EDと歯周病に関して、過去に数少ないが臨床研究があり、一つは、非ED患者よりED患者で慢性歯周炎患者の罹患率が高いと報告している(被験者は305人)。今ひとつは関連がなかったと報告している(70人)。そこで、今回は大規模に両者の関連を検討した、というわけだ。
台湾の32,856人のED患者と162,480人のコントロール患者を対象に調べると、歯周病とEDに関連性がみられたという。両者に関連性がみられるメカニズムを次のように説明している。歯周炎の病原性菌は全身的炎症の原因であることが知られている。そして、慢性炎症がEDの理由となりうることが報告されている。それゆえ、歯周病→EDということだ。これを補強する説明として、内皮細胞機能障害はEDと関連していること、歯周病が内皮細胞の機能を損ない、歯周病治療が内皮細胞の機能を改善させうること、本研究で歯周炎と診断された人のうち歯肉切除術や歯周外科処置を受けている患者とEDとの関連性はそうでない患者に比較してオッズ比が低下(OR=1.29
vs OR=4.33)していること、動物実験ではあるが歯周炎が遠隔のペニス血管内皮機能を損なうこと、などを述べている。
さて、若年者18-29才集団ではEDと歯周病に強い相関が認められたが、これはサーベイランスバイアスだと考察している。そのくだりをちょっと書き抜いてみよう。
「もし若い台湾青年が性的行為に頻度高くいそしむならば、彼らは首尾良く成し遂げることができない場合に、このことを認識する機会が増える。台湾人青年はまた、伴侶を選択することと、台湾人は結婚後はすぐに子供を授かるべきだと文化的にプレッシャーをかけられているので、結婚後すぐに子供の父親になること、という二つの使命を積極的に果たそうとし、高い目標達成の重圧下にいるのかもしれない。このような考えはほとんど推測にすぎないのだが、台湾では父親の約65%が34才の誕生日を迎えるまでに子持ちとなっており、台湾人男性の平均結婚年齢は31.8才という事実がある。
一方ミドルエイジの台湾人は青年層と対照的である。ミドルエイジは、家庭を築いた後に、家族を養うためにかつ仕事のためにと重荷を背負い負担を強いられている。人生のこのステージでは、台湾人はロマンチックな関係などは幻想にすぎないと諦め、そしてそれゆえ男性機能をためす機会を持つことがなく、EDであるということを認識さえしていないかもしれない。」ふ~ん。こんなところで台湾人男性の悲哀を聞こうとは。要は青年層はED患者が顕在化しやすく、中年は隠れEDになりやすい、ですね。間違えないで欲しいがこれは考察の一節である。
糖尿病のようにこれからこの手合いの研究が盛んになるのだろうか、歯周病研究の論文記述とは思えないよね、と書くか、台湾の青年中年男性に同情を寄せる、とわびしさを強調しようか、いやいや日本の事だと思った、と他人事ではないとするか、ハテなんてしめくくろう。)
勃起不全、歯周病、性的機能不全
(平成24年5月13日)
No.112
Regenerative therapy of infrabony defects with or without systemic doxycycline. A randomized placebo-controlled trial.
Rollke L, Schacher B, Wohlfeil M, Kim TS, Kaltschmitt J, Krieger J, Krigar DM, Reitmeir P, Eickholz P.
J Clin Periodontol. 2012 May;39(5):448-56.
この研究の目的は、術後に全身的ドキシサイクリン(DOXY)投与を受けたあるいは受けなかった場合に、骨内欠損の再生治療成績を比較することである。
2施設で61人の被験者は、1カ所の骨内欠損に対してエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)、EMD+フィラーあるいはメンブレンで治療を受けた。患者は歯周外科処置後、ランダムに割り当てられて200mgDOXY/日あるはプラセボ(PLAC)を7日間服用した。外科処置前と術後6ヶ月後にプロービング深さ(PPD)と垂直アタッチメントレベル(PAL-V)が記録された。
55人の被験者(DOXY: 27、PLAC: 27)がEMD単独で治療を受け、6ヶ月後に再診査されていた。術後7から8日後、両群の81%欠損で完全なフラップの閉鎖がみられた。両群に有意な(p<0.001)PPD減少(DOXY: 3.87 ± 1.44 mm; PLAC: 3.67 ± 1.30 mm)とPAL-V獲得(DOXY: 3.11 ± 1.50 mm; PLAC: 3.32 ± 1.83 mm)が認められた。しかし、群間に統計学的な有意差はみられなかった(PPD: 0.20; p = 0.588; PAL-V: 0.21; p = 0.657)
骨内欠損に対しEMDにて治療をおこなった後、200mgDOXYを服用しても、PLACに比較してPPD減少とPAL-V獲得に対する有効性はみられなかった。これは低い効果(50%)でランダムな偶然のためかもしれない。
(私の感想など:歯周外科や歯周組織再生治療後における歯周組織治癒は、細菌性プラークによって妨げられる。それゆえ術後のプラークコントロールは重要であろう。ところが、これまでの報告では、術後に抗生剤の使用をおこなっても、必ずしも臨床成績が良くなるわけではない。用いられる抗生物質はフルマウスディスインフェクションになじみの、メトロニダゾールやアモキシシリンなどである。そこで今回著者らはこれまでにキチンと検討されていなかったテトラサイクリン系抗生物質ドキシサイクリン(DOXY)を用いて、術後の抗生剤投与が本当に再生治療後の臨床成績に影響しないのか検討した、ということだ。
しかし、結果はこれまでの多くの報告と同様に抗生剤使用は再生治療の臨床成績には影響を与えなかった。
抗生剤は全く何も作用していないか、そんなことはない。細菌学的検査をおこなっていて、P.gingivalis、Treponema denticola、Fusobacterium nucleatumではDOXY群のみでベースラインに比較して2週間後の菌数が有意に低下している。ただしF.n.を除き検索した5種類の菌では群間に差はない。総菌数でもベースラインと2週間後、および群間に差は無い。まあ抗生物質の使用である種の菌には効いているということだ。ディスカッションでは、何かコメントすれば良いのに細菌検査については何も触れていない。冗長だとレビューヤーに却下されたのだろうか。
抗生物質投与で細菌叢に影響は与えるように思える。骨の再生量に術後の細菌叢が与える影響が不明なのだが、少なくとも抗生物質投与が骨再生を劇的に増加させることはないようで、抗生物質で叩かなくてもしっかり再生してくれるということのようだ。)
ドキシサイクリン、初期創傷治癒、骨内欠損、歯周病、再生治療、エナメルマトリックスデリバティブ
(平成24年5月11日)
No.111
Intraoperative bleeding during open flap debridement and regenerative periodontal surgery.
Zigdon H, Levin L, Filatov M, Oettinger-Barak O, Machtei EE.
J Periodontol. 2012 Jan;83(1):55-60.
この研究の目的は歯周外科処置中の術中出血量を測定することである。
歯周外科処置が予定されている患者がこの研究のために募集された。喫煙習慣、一般健康状態、投薬状況に関するデータが収集された。手術部位の歯数と手術時間に加え、使用された局所麻酔薬量が記録された。術中は口腔内から液体が吸引され滅菌容器に回収された。液中の血液総量を計量するために、参照分子として毛細血管フルクトサミンを用いた比色定量法が用いられた。
26人の患者がこの研究対象となった。処置中に喪失した血液総量は、平均59.47±38.2mLで6.0から145.0mLの幅があった。アスピリン(アセチルサリチル酸)服用患者は43.26±31.5mLの平均失血量であったのに対し、服用していなかった患者の平均出血量は高かった(65.4±39.4mL)が有意差はなかった。局所の麻酔量、術野の範囲、手術時間は出血量とは関係がなかった。喫煙者の平均出血量は、喫煙経験者(12±8.4mL)や非喫煙者(54.74±30.5mL)に比較すると有意に高い値を示した(96.47±44.2mL)。
本研究の結果は歯周外科処置時の出血量はごく限られたものであるという過去の報告を支持し、再確認するものである。
(私の感想など:イントロをまとめてみよう。
成人の循環血液量は4から7Lである、500から800mLの出血は無視できる程度かもしれない(献血の場合として)。しかし血液量の30%以上を失うと、循環血液量減少性ショックの可能性が生じる。血液量の50%が急速に失われると適切な処置が施されないと致死的な状態に陥る。
術中の出血量測定法のうち最も簡単でよく用いられる方法は術中の出血を回収して測定することである。ところが口腔内の手術の際には唾液の混入があるために、これを分離することが困難である。他の方法には、血液を拭き取って術前術後の重量計測を行う方法や拭き取った血液中のヘモグロビンを測定して、血中ヘモグロビンとの比較から出血量を推計する方法などである。ただヘモグロビンは不安定で、したがってそれを用いた計測量も実際よりも低く見積もられてしまう。
歯周外科処置は日常行われる歯周治療の一つであるが、歯周外科処置中の出血は、これを経験したことのない人には相当なショックに思われるかも知れない。でも歯周外科処置中の出血量を測定した報告というのはあまり多くない。とここまでイントロ記述。
そこで今回の研究ではフルクトサミンをマーカーにした、これまでよりも信頼性の高い方法を用いて歯周外科処置中の出血量を測定してみました、ということだ。
この研究では、口腔内の血液を含む液体中のフルクトサミンを測定し、被験者の血中フルクトサミン濃度から回収液体中の血液量を算出している。処置中に喪失した血液総量は、平均59.47±38.2mLで6.0から145.0mLの幅があった。他の手術との比較も記載している。出産では300から500mL、帝王切開で750から1000mL、下顎矯正手術で平均617.6±438mLという。歯周外科処置での過去の報告では、17.8±9.6から31.9±15.7mL、54.9±36から70.2±53mL、そして0.5から62mLなどがあることを示している。まあ普通に考えると、これらの手術より、そら出血量は少なかろう。ちなみにこの研究(イスラエルでの実施)での局所麻酔使用量は2.3mLから16ml(平均5.92±3.2mL)の使用だった。平均の処置歯数は4.73±3.1で手術時間は30から240分(平均74.53±49.5)だった。
過去の報告では、出血量のほとんどは処置後30分以内のものだそうだ。つまり、切開して炎症組織の掻爬というステップに当たる。だから、出血量を少なくしたければ、炎症組織の掻爬を早く十分にしようぜ、ということになり、掻爬が終われば出血量がグンと少なくなる。
抗凝固作用のあるアスピリン服用(100mg/日)患者では服用していない患者との出血量に統計学的な有意差はなかった。過去の方向も引き合いにだして、低濃度長期使用アスピリンを使用している患者だからといって、術中の出血量が増えるわけではないから、薬剤の使用を変更しなくてもよいだろうと述べている。
喫煙患者では、見た目の歯肉の炎症が少なく、BOPも低いのにも関わらず、今回の研究では喫煙者の手術時の出血量が多いことがわかった(著者らは想定していなかったようだ)。喫煙が生体の炎症反応に及ぼす影響は複雑でno108でも書かれているように一筋縄ではいかない。でも悪い方向のことが生じやすいのは確かなようだ。)
アスピリン、フルクトサミン、組織再生誘導法
(平成24年5月5日)