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歯周病研究論文

歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p076(no.341-345)

No.345
Periodontal disease as a risk indicator for poor physical fitness: a cross-sectional observational study.

Oliveira JA, Hoppe CB, Gomes MS, Grecca FS, Haas AN.

J Periodontol. 2015 Jan;86(1):44-52.

身体活動性の低下は口腔健康の衰えと関連がある。この研究の目的は歯周病が体力低下のリスク指標となるかどうかを評価することである。

横断的研究には111人の男性が含まれ、4つのエクササイズからなる体力測定(PFT)をおこなった。体力測定は1)両腕をつかって身体を持ち上げ、下げする腕立て伏せ、2)バーを握ってぶら下がり、身体を引き上げる懸垂運動、3)床から上部および下部椎骨を起こす腹筋運動、4)12分間のランニング、である。体力測定スコア(範囲は1-300)は高いスコアであるほど、より良好な運動能力を有していることを意味し、おのおのの参加者で決定された。一人の歯周病専門医がアタッチメントロス(AL)とプロービング深さ(PD)を評価した。体力は最高PFTスコアが達成されたか、されなかったどうかに従って二分された。多変量ロジスティックモデルが年齢、過体重(肥満度指数25-29.9
kg/m(2))と毎日の運動頻度に対して補正され適合された。

サンプルの平均年齢は 34.8 ± 10.3才だった。過体重の個人は正常体重の個人 (289.3 ± 16.8 points)よりも有意に低い PFTスコア(276.9 ± 24.1 points) であった。AL? 4 mmが少なくとも1本存在する個人は 、そうでない個人(285.9 ± 20.2 points)に比較して。有意に低いPFTスコア (277.8 ± 23.6 points)であった。PDあるいはALにおける1-mm増加は69%と75%とそれぞれ最も高いPFTスコアに達する機会が有意に減少した。

歯周病は男性の体力の弱さに対するリスク指標と考えられる。

(歯周病、体力、リスク因子)

「この研究の対象集団というのが体力測定を年に2回受けているブラジルの軍警察官だ。この集団の60%は過体重だった。また体力検査の結果、37.8%の人がPFTスコアの最高値であった。

低い運動能力はPDやALによって予測されるという。歯周病の人は体力が弱い!!PDやALの上昇は血清の亢炎症性サイトカインレベルの上昇と関連があり、この亢炎症性サイトカインが筋肉代謝を修飾する可能性が一つ。今ひとつは歯周病が倦怠感に作用している可能性だ。これは中枢メカニズムあるいは局所の因子から生じるという。まあそんなことが書かれている。

運動能力は行動的習慣に影響を受ける。この点からいうと、歯周病も同様であろう。なので、歯周組織の状態と運動能力の逆相関はこのような観点から解釈することもできよう。しかし、自己申告による歯ブラシと歯間ブラシの清掃回数と運動能力に関連はなかったようだ。」

(平成27年2月22日)


No.344
What is the best predictor for oral cleanliness after brushing? Results from an observational cohort study.

Harnacke D1, Winterfeld T, Erhardt J, Schlueter N, Ganss C, Margraf-Stiksrud J, Deinzer R.

J Periodontol. 2015 Jan;86(1):101-7.

ブラッシング能力はブラッシング達成のために重要な因子である。それゆえ、ブラッシング能力を観察することは口腔清掃の欠点を説明する手助けとなるかも知れない。しかしながら、1回で観察されるブラッシング行動が別の機会に観察されるブラッシング能力とどのように関連しているかは解明されていない。著者らは、数週間後に口腔清掃を達成する能力について、ビデオ観察された習慣的清掃行動の予測妥当性を評価した。

研究の参加者(N=101)は歯の清掃の間ビデオ記録された。二人の独立した、標準化された診査者がブラッシング時間、ブラッシング体系の一つの指標として口腔領域全体をブラッシングする時間配分の公正さ、明確なブラッシングの移動時間を評価した。何週間か後に (平均6.4週、1から24週)、70人の参加者はできる限りプラークを除去するように求められ、口腔内の清潔さの程度が直後に評価された。ブラッシングパラメーターの予知的価値を評価するために、前方回帰分析がおこなわれた。

回帰分析の結果、ブラッシング時間の配分の均一さと回転運動の持続時間が口腔内の清掃性の変化の20.8%を説明することが示された(P<0.001)。

ブラッシング時間配分の均一さと回転運動時間は口腔清掃に関して、ブラッシング能力を予知する、観察された習慣的ブラッシング項目である。

(デンタルプラーク、観察、口腔清掃、歯ブラシ、ビデオ記録)

「多くの人が一日に二度あるいはそれ以上口腔清掃をおこなっている。それにも関わらず、歯肉炎や歯周炎の有病率は非常に高い。口腔清掃は歯周病予防の手段であるとともに、問題点のある方法であるともいえる。みんなしてるけど、うまくできていないということだ。つまり、各個人の口腔清掃能力には差があるのだ。

そこで、ブラッシングによって高い清掃性が得られる能力を予知するパラメーターは何か?ということを調べてみたのが本論文だ。

まずわかりやすい単純な結論は、プラーク除去はブラッシング時間と相関しない。2分ぐらいまでがピークとなるような双曲線的な関連となるようだ。口腔側がそもそも磨けていない人では、時間をかけてもプラークの付着は減らない。一定時間以上かけても無駄ということで、清掃性は向上しない。

関連があるというブラッシングの配分時間や回転状のブラッシング方法でも、高が20%であり、残り80%は説明できる要因が不明だった。

ビデオ撮影なので、歯ブラシがどこに位置しているか正確には把握できないだろうし、ブラシ圧や歯ブラシの毛先が歯肉縁に到達しているかなども判別が困難かも知れない。



(平成27年2月18日)


No.343

Association between periodontal condition and hypertension in a non-smoking
population aged 30-49 years: results of the Health 2000 Survey in Finland.

Ollikainen E, Saxlin T, Tervonen T, Suominen AL, Knuuttila M, Jula A, Ylostalo
P.

J Clin Periodontol. 2014 Dec;41(12):1132-8.

この横断的研究の目的は歯周組織の状態が高血圧あるいは収縮期血圧と関連があるか否か調べることである。

この研究対象集団はフィンランド2000年国民健康調査において、有歯顎、非糖尿そして非喫煙である30-49才の人から構成されていた。 深くなった(?4
mm)そして深い (?6 mm)歯周ポケットを有する歯の数と歯肉出血のある1/6額の数が説明変数として用いられた。高血圧と収縮期血圧が結果因子として用いられた。

交絡因子に対して補正した後、深くなった (?4 mm) (OR 0.98, 95% CI 0.95-1.01)あるいは深い(?6 mm) (OR 1.01, 95% CI 0.90-1.12) 歯周ポケットの歯の数と高血圧との間に一貫性のある関連はなかった。また出血1/6顎数と高血圧との間にも本質的な関連はなかった。

30-49才の非糖尿病、非喫煙者において歯周ポケット形成と歯肉出血は高血圧と関連がないようだった。高血圧の進行における感染性歯周疾患の役割を決定するためには実験的研究デザインを用いたさらなる研究が必要だろう。

(血圧、歯肉出血、高血圧、歯周組織感染、歯周ポケット)

「歯周病と高血圧との間に何らかの関連性があるだろうと考えて、頑張って統計学的処理をおこなったが、何ら関連性はみられなかった。年齢も性別も肥満度指数も身体活動度も血清の脂質組成も考慮して検討したが、どう頑張っても関連性は見られなかった。さらに高血圧と高血圧ではないという群分けと歯周病との関連の検討だけではなく、拡張期血圧でも検討したが関連はなかった。

今回の検討は横断的研究なので、歯周病が生じて血圧に影響するのに期間が必要であれば、そのために関連性が検出されなかったという理由も考えられる。

歯周病と血圧は交絡していて、また両者が他の何らかの共通して決定因子である可能性もある。

今回の研究は歯周病、歯周ポケットの深化、歯肉炎症などの臨床的に検出される徴候が高血圧や拡張期血圧と関連していることを、何ら示唆することはなかった。」

(平成27年2月14日)


No.342

Effect of smoking cessation on non-surgical periodontal therapy: results after 24 months.

Rosa EF, Corraini P, Inoue G, Gomes EF, Guglielmetti MR, Sanda SR, Lotufo
JP, Romito GA, Pannuti CM.

J Clin Periodontol. 2014 Dec;41(12):1145-53.

この24ヶ月フォロー、前向き研究の目的は慢性歯周炎の成人で、禁煙が非外科的治療(NSPT)に及ぼす影響を評価することである。

従前の12ヶ月フォロー研究に関連して募集し、フォロー期間が延長され、結果として選抜された286人被験者のうち116人が適格者であった。彼らはNSPTと同時に禁煙介入を受けた。歯周メインテナンスは3ヶ月毎におこなわれた。喫煙状態を盲検にして、標準化した試験者がベースライン時、フォロー3、12と24ヶ月時に、1歯あたり、6部位で全顎の歯周組織診査をおこなった。人口統計学および挙動情報を収集するために、呼気中の一酸化炭素測定とインタビューがおこなわれた。

登録された116人の被験者から61人が24ヶ月後のフォローアップまで継続参加した。これらのうち、フォロー24ヶ月後の時点で、18人が喫煙を中止し(Q)、32人が喫煙を続け(NQ)、11人は禁煙喫煙を繰り返していた。その結果、NQに比較して、Qは疾患部位で有意に高い平均CALを獲得し、CAL>3
mmの部位割合が大きく減少した。加えて、NQに比較してQは有意に高い平均プロービング深さの減少を示した。

禁煙は慢性歯周炎患者で、非外科的治療の効果に加えて有益な効果をもたらす。

(歯周病、歯周炎、喫煙、禁煙、タバコ)

「禁煙者は非喫煙者に比べると治療効果が悪くなることは種々報告されている。では、禁煙をすると歯周病治療の効果は高まるのだろうか。禁煙の歯周治療に及ぼす影響に関する研究は、Chambroneら(2013)やFioriniら(2014)のシステマティックレビューで、2報が検討対象となっている。ともに12ヶ月フォローで、介入試験だ。これらによると、非外科的な処置によるプロービング深さの減少に関して、禁煙は中等度の付加的な効果を促進するようだが、明確な結論的コメントはなされていない。

今回の研究で24ヶ月後ならば、禁煙者は喫煙を続けた非禁煙者に対して、CALとプロービング深さといずれを指標にしても、非外科的な治療効果が高かったことが示されている。ただ、禁煙しそこなった群に対しては、サンプル数の少なさ等で評価はできていない。

禁煙できない人は、治療期間が伸びると当然のように歯周治療に対する脱落率も高くなるだろう。この手の介入試験の難しさがある。」

(平成27年2月7日)


No.341
Effect of intensive oral hygiene regimen during pregnancy on periodontal health, cytokine levels, and pregnancy outcomes: a pilot study.

Kaur M, Geisinger ML, Geurs NC, Griffin R, Vassilopoulos PJ, Vermeulen L, Haigh S, Reddy MS.

J Periodontol. 2014 Dec;85(12):1684-92.

妊娠期徹底した口腔清掃レジメと歯周治療が、歯周組織と、歯肉溝滲出液(GCF )と血清サイトカイン、ならびに妊娠成績に及ぼす影響に関するデータは限定されている。

120人の地域社会に暮らす、16-35才の妊娠16から24週の女性に対し、臨床研究がおこなわれた。各参加者は広範型、中等度から重度歯肉炎の臨床症状を呈していた。毎日の徹底した口腔清掃レジメのために、清掃指導とともに清掃道具が提供された。ベースライン時非外科療法が施された。口腔診査はベースライン時と、4と8週に再び口腔診査がおこなわれた。ベースライン時と8週との間の臨床変数とGCFおよび血清サイトカインレベル(インターロイキン[IL]-1β、IL-6、腫瘍壊死因子[TNF]-α)における平均変化が対応のあるt検定で計算された。出産時の妊娠成績が記録された。

研究期間では全ての臨床変数で統計学的に有意な減少 (P <0.0001)と、GCF中のTNF-α (P = 0.0076)と IL-1β (P = 0.0098)レベルの減少が 示された。早産(妊娠<37週)率は6.7% (P = 0.113)で低体重児出産 (<2,500 g)は10.2% (P = 1.00)であった。

研究対象となった集団内では、妊娠初期8週間に提供された、徹底した清掃指導と非外科的歯周治療の結果、歯肉炎症の減少と歯周組織健康の広範な改善がみられた。これらの所見を立証するためには、大規模、無作為、コントロール研究が必要だ。

(サイトカイン、歯肉炎、炎症、口腔清掃、妊娠、早産)

「ベースライン時から8週後にIL1やTNF-αでGCF局所レベルが減少したが、全身的には変化がなかった(過去にIL-8とIL-1を検索した報告と同様の結果である)。今回の研究では非介入あるいは時期を遅らせて介入する、といったコントロール群がない。そのため、今回の結果でみられたサイトカイン変動は妊娠期に生じる生理的な変動の可能性もある。

口腟内のグラム陰性菌感染が細胞内免疫を活性化して、IL-1 β、IL-6、TNF αやプロスタグランディン産生を上昇させ、早期陣痛を引き起こす可能性がある。動物実験だが、妊娠ハムスターにPgをインジェクションすると胎児体重の減少があるという。歯肉炎症のある患者では、亢炎症マーカーレベルの上昇と早産とが関連しているという。歯肉で産生される炎症性サイトカインが原因の一つと考察している。

periodontal inflamed surface area (PISA)はNesse2008らの報告にあるアルゴリズムに準じて算出している(ただし、アタッチメントレベルではなく歯周ポケット深さを用いている)。PISAは出血ポケット上皮の表面積で、炎症性歯周組織を定量化したもので、すなわち歯周炎によってもたらされた炎症性負荷量を表すと考えられる。

本研究では、介入後に100mm2のPISA減少がLBWの減少と関連が見られた。したがって、歯周組織の炎症負荷に閾値があって、妊娠性歯肉炎患者においては、歯周治療介入によってその閾値以下にPISAを下げることが可能なのだろう。このことが全身的な炎症を改善させ、さらには出産成績の向上につながるのであろう。さらには口腔清掃介入は歯周ポケット内の潰瘍上皮を減少させるので二次的に生じる菌血症の抑制にも貢献しているではないかと考察している。」

(平成27年2月1日)


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