歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p092(no.421-425)
No.425
Different antibiotic protocols in the treatment of severe chronic periodontitis: A 1-year randomized trial.
Borges I, Faveri M, Figueiredo LC, Duarte PM, Retamal-Valdes B, Montenegro SCL, Feres M.
J Clin Periodontol. 2017 Aug;44(8):822-832.
この研究の目的は広汎型慢性歯周炎(GChP)の治療においてメトロニダゾール(MTZ)の 異なる濃度とMTZ +アモキシシリン(AMX)の異なる服用期間の臨床的効果を評価することである。
重度GChP被験者がスケーリング/ルートプレーニング(SRP)単独、あるいは250 または400mgのMTZ+AMX(500mg)を1日3回(TID)、7あるいは14日間服用する併用療法に無作為に割り当てられた。被験者は1年間モニターされた。
109人の被験者が参加した。1年後、AMX + 250あるいは400 mgのMTZを14日間服用した被験者が治療の臨床的エンドポイント(≥5 mm のプロービングデプスが≤4部位)がそれぞれ61.9%と63.6%であり、対して250あるいは400 mgのMTZを7日間服用した場合は31.8%(p < .05)、そしてSRP単独の場合は13.6%(p < .05)であった。MTZ + AMXの14日間が1年後の臨床的エンドポイント達成における被験者の唯一の有意な予測因子であった(OR, 5.26; 95% CI, 2.3-12.1, p = .0000)。有害事象の頻度は治療群間で差がなかった(p > .05)。
400あるいは250 mgのMTZ+500 mgのAMX/TID/14日の付加的使用は、重度GChPの治療においてSRP単独で達せられる恩恵を上回る、統計学的に有意で臨床的に適切な有益性を提供する。この集団における7日レジメの付加的有益性は劣っていた。
(抗菌剤、臨床成績、臨床研究、歯周病、歯周組織、治療計画)
「SRPに抗菌剤を併用すると、SRP単独よりも歯周病の治療効果が高まるという報告が多くある。用いられる抗菌剤は種々あるが、ゴールドスタンダードとされているのはアモキシシリン(AMX)+メトロニダゾール(MTZ)だ。ただ、その処方については様々で、どのように処方すればベストなのかは明確にはされていない。
用いるMTZの濃度を二つ(250mg、400mg)そして服用期間も二つ(7日、14日)用意して、その効果を比較したのがこの論文。結論はわかりやすくて、抗菌剤濃度では差がでなくて、服用期間が重要という。評価項目の5mm以上のプロービングデプス4カ所以下の達成率が、高いだけでなく、プロービングデプスや臨床的アタッチメントレベルに関する成績も良かった。有害事象はというと、濃度の高低や投与期間の長短にかかわらず今回の研究では差がなかった。抗菌剤に抵抗性のあるバイオフィルム中に生存する細菌に作用するためには、十分な時間が必要なのだろう、という考察。
抗菌剤の濃度は、低濃度250mgでも高濃度400mgでもあんまりかわらなかった。では低濃度でも良いのかと言うと、低濃度の抗菌剤処方は耐性菌を増加させる可能性があるので、詳細な検討が必要であろう、と。
7日投与よりも14日投与の方がよろしかろう、ということだが、7日がだめだったかというとそうではなく、SRP単独に比較して効果はでている。また7日処方にSRPの付加的有効性をうたう過去の報告は少なくなく、3日処方でも有効であったとする報告もあるぐらいである。今回は重度歯周炎が対象だったので付加的治療効果を高めるためには14日必要であったが、中等度では7日でも十分なのかもしれない(treat-to target 目標に向けた治療)。」
(平成29年12月26日)
重度GChP被験者がスケーリング/ルートプレーニング(SRP)単独、あるいは250 または400mgのMTZ+AMX(500mg)を1日3回(TID)、7あるいは14日間服用する併用療法に無作為に割り当てられた。被験者は1年間モニターされた。
109人の被験者が参加した。1年後、AMX + 250あるいは400 mgのMTZを14日間服用した被験者が治療の臨床的エンドポイント(≥5 mm のプロービングデプスが≤4部位)がそれぞれ61.9%と63.6%であり、対して250あるいは400 mgのMTZを7日間服用した場合は31.8%(p < .05)、そしてSRP単独の場合は13.6%(p < .05)であった。MTZ + AMXの14日間が1年後の臨床的エンドポイント達成における被験者の唯一の有意な予測因子であった(OR, 5.26; 95% CI, 2.3-12.1, p = .0000)。有害事象の頻度は治療群間で差がなかった(p > .05)。
400あるいは250 mgのMTZ+500 mgのAMX/TID/14日の付加的使用は、重度GChPの治療においてSRP単独で達せられる恩恵を上回る、統計学的に有意で臨床的に適切な有益性を提供する。この集団における7日レジメの付加的有益性は劣っていた。
(抗菌剤、臨床成績、臨床研究、歯周病、歯周組織、治療計画)
「SRPに抗菌剤を併用すると、SRP単独よりも歯周病の治療効果が高まるという報告が多くある。用いられる抗菌剤は種々あるが、ゴールドスタンダードとされているのはアモキシシリン(AMX)+メトロニダゾール(MTZ)だ。ただ、その処方については様々で、どのように処方すればベストなのかは明確にはされていない。
用いるMTZの濃度を二つ(250mg、400mg)そして服用期間も二つ(7日、14日)用意して、その効果を比較したのがこの論文。結論はわかりやすくて、抗菌剤濃度では差がでなくて、服用期間が重要という。評価項目の5mm以上のプロービングデプス4カ所以下の達成率が、高いだけでなく、プロービングデプスや臨床的アタッチメントレベルに関する成績も良かった。有害事象はというと、濃度の高低や投与期間の長短にかかわらず今回の研究では差がなかった。抗菌剤に抵抗性のあるバイオフィルム中に生存する細菌に作用するためには、十分な時間が必要なのだろう、という考察。
抗菌剤の濃度は、低濃度250mgでも高濃度400mgでもあんまりかわらなかった。では低濃度でも良いのかと言うと、低濃度の抗菌剤処方は耐性菌を増加させる可能性があるので、詳細な検討が必要であろう、と。
7日投与よりも14日投与の方がよろしかろう、ということだが、7日がだめだったかというとそうではなく、SRP単独に比較して効果はでている。また7日処方にSRPの付加的有効性をうたう過去の報告は少なくなく、3日処方でも有効であったとする報告もあるぐらいである。今回は重度歯周炎が対象だったので付加的治療効果を高めるためには14日必要であったが、中等度では7日でも十分なのかもしれない(treat-to target 目標に向けた治療)。」
(平成29年12月26日)
No.424
Age of onset of disease in subjects with severe periodontitis: A 9- to 34-year retrospective study.
Thorbert-Mros S, Cassel B, Berglundh T.
J Clin Periodontol. 2017 Aug;44(8):778-783.
この研究の目的は広汎型重度歯周炎と診断された、30-45歳の患者集団における疾患発症年齢を後ろ向きに評価することである。
74人の患者がこの研究の参加者として同意した。42人の患者の患者ファイルとレントゲンが80以上の開業医と公的歯科クリニックから回収された。確認できるセメント-エナメル境(CEJ)と歯槽骨頂(BC)を示す、レントゲンにおける隣接面部位が解析された。CEJとBC間の距離が測定され、二つの閾値が用いられた。すなわち、≥3
mm and ≥5 mmである。いずれの場所でもレントゲン診査で≥3 mm (F3) と≥5 mm (F5)のCEJ-BCの距離を示した、患者の最も低い年齢が記録された。同様に、レントゲン診査でCEJ-BC
≥3 mm (L0)の部位がない最も高い年齢が評価された。
歯周組織破壊が生じるより前(L0)、罹患ステージF3、F5そしてリクルート時点を含む完全なレントゲン一式が19人の患者で回収された。疾患の初発、すなわちL0とL3間の時期は22.3歳と28.1歳間で生じており、重度の骨吸収(F5)を示す部位は約32.4歳で検出された。
30歳から45歳の今回のサンプル被験者において、重度、広汎型歯周炎は主に22歳から28歳の間に始まっていた。
(骨レベル、病気の開始、歯周炎、レントゲン)
「成人でみられる歯周炎には慢性歯周炎と侵襲性歯周炎の大きな二つの代表的な歯周炎がある。侵襲性歯周炎は急速に進行し、ほとんどが35歳に至る前に発症するとされている。
今回研究対象とした30-45歳の重度歯周炎患者の多くは35歳以上であった。そして、これらの患者の歯周炎発症年齢は、レントゲン的な解析から22歳から28歳であることが示された。過去の侵襲性歯周炎のシステマティックレビューでは30-40歳で有病率が急激に増加して、38歳で発症率がピークに達するとしている。
26歳、32歳、と38歳で定点観測的に調査した研究ではアタッチメントロスは年齢とともに増加し、26-32歳間よりも32-38歳間でその変化が著しかった(先に述べた過去の報告を追認している)。そして、その変化の特徴としては、すでに病的な部位の悪化というより、新たにアタッチメントロスが生じる、ということであった。」
(平成29年11月9日)
74人の患者がこの研究の参加者として同意した。42人の患者の患者ファイルとレントゲンが80以上の開業医と公的歯科クリニックから回収された。確認できるセメント-エナメル境(CEJ)と歯槽骨頂(BC)を示す、レントゲンにおける隣接面部位が解析された。CEJとBC間の距離が測定され、二つの閾値が用いられた。すなわち、≥3
mm and ≥5 mmである。いずれの場所でもレントゲン診査で≥3 mm (F3) と≥5 mm (F5)のCEJ-BCの距離を示した、患者の最も低い年齢が記録された。同様に、レントゲン診査でCEJ-BC
≥3 mm (L0)の部位がない最も高い年齢が評価された。
歯周組織破壊が生じるより前(L0)、罹患ステージF3、F5そしてリクルート時点を含む完全なレントゲン一式が19人の患者で回収された。疾患の初発、すなわちL0とL3間の時期は22.3歳と28.1歳間で生じており、重度の骨吸収(F5)を示す部位は約32.4歳で検出された。
30歳から45歳の今回のサンプル被験者において、重度、広汎型歯周炎は主に22歳から28歳の間に始まっていた。
(骨レベル、病気の開始、歯周炎、レントゲン)
「成人でみられる歯周炎には慢性歯周炎と侵襲性歯周炎の大きな二つの代表的な歯周炎がある。侵襲性歯周炎は急速に進行し、ほとんどが35歳に至る前に発症するとされている。
今回研究対象とした30-45歳の重度歯周炎患者の多くは35歳以上であった。そして、これらの患者の歯周炎発症年齢は、レントゲン的な解析から22歳から28歳であることが示された。過去の侵襲性歯周炎のシステマティックレビューでは30-40歳で有病率が急激に増加して、38歳で発症率がピークに達するとしている。
26歳、32歳、と38歳で定点観測的に調査した研究ではアタッチメントロスは年齢とともに増加し、26-32歳間よりも32-38歳間でその変化が著しかった(先に述べた過去の報告を追認している)。そして、その変化の特徴としては、すでに病的な部位の悪化というより、新たにアタッチメントロスが生じる、ということであった。」
(平成29年11月9日)
No.423
The effect of furcation involvement on tooth loss in a population without regular periodontal therapy.
Nibali L, Krajewski A, Donos N, Völzke H, Pink C, Kocher T, Holtfreter B.
J Clin Periodontol. 2017 Aug;44(8):813-821
定期的な歯周治療を受けていない被験者の、分岐部病変(FI)と歯の喪失との関連を評価することを目的とした。ポメラニア健康調査(SHIP)のベースラインと11年追跡調査に参加した2333人の被験者からのデータが用いられた。全ての被験者は口腔内の半分を、片側の上顎と片側の下顎のFIを含む、歯周組織診査がおこなわれた。総数1897被験者と3267臼歯が最終解析に含まれた。
全体で、追跡期間中375被験者(19.8%)が臼歯を喪失した。FIのない、クラスI FI、クラスII FIとクラスIII FIのある臼歯のそれぞれ5.6%、12.7%、
34.0%と55.6%が喪失した。最初のプロービングポケット深さ(PPD)と臨床的アタッチメントレベル(CAL)は臼歯喪失と関連があった(p
< .001)。ベースライン時のFIのない臼歯に比較して、ベースライン時のクラスI FIは歯の喪失の1.73IRR(罹患率比)(95%
CI=1.34-2.23, p < .001)と関連があり、一方クラスIIーIII は3.88IRRの関連があった(95% CI=2.94-5.11,
p < .001)。
この研究は、定期的な歯周ケアを受けていない集団において、歯周分岐部病変によって影響を受ける臼歯の喪失は、そのリスクが増大するとのエビデンスを提供する。
(アタッチメントロス、分岐部、歯周炎、進行、歯の喪失)
「本研究(ベースライン時中等度歯周炎34.8%、重度歯周炎14.9%)で11年フォローした分岐部病変(FI)を有する臼歯のおおよそ18.4%が失われた。
ベースライン時分岐部病変と診断された場合、その後の臼歯喪失と関連があった。臼歯喪失の割合は分岐部病変の進行とともに増加していた(クラスI分岐部病変の上顎13.5%、下顎11.8%、クラスII分岐部病変の上顎34.8%、下顎
32.9% そしてクラスIII分岐部病変の上顎53.3%、下顎 60.0%)。
被験者の28%は何らかの歯周治療を受けていた(内容の詳細は不明)。おもしろいことにこの治療を受けたと報告のあった被験者群はそうでない群より、分岐部が原因での喪失の割合が高かった。もともと今回の対象集団はSPTを受けていないような集団である。そのような集団のうち治療を受けたという人なので、きっと何らかの症状があったと類推される。きっと病状の程度がひどいということなのだろう。
この研究は歯周治療SPTを受けていない被験者であるが、歯周治療を受けている集団ではどうだろう。5〜53年の追跡でFIを有する臼歯の生存は43〜100%と報告されている。2016年のシステマティックレビューでは10年までの追跡研究で分岐部が原因による臼歯の喪失リスクは1.53と評価されている(10〜15年観察ではOR=2.71)。
今回の研究では分岐部病変を有しない臼歯の喪失割合は上顎が5.2%で下顎が6.7%であった。一方、歯周炎患者で分岐部病変のない臼歯の喪失は上顎が9.7%、下顎が6.7%と報告されている。従って、分岐部病変の存在する臼歯では、歯の存続に対して歯周治療の影響は大きいが、ベースライン時に分岐部病変のない臼歯(多くは歯周炎のない患者)ではそうでもない、と類推される。
分岐部病変の程度が進めば喪失の割合がより高くなるのだが、SPTを受けている人に比べて今回の定期的な治療を受けていない被験者の歯の喪失は、この分岐部病変の影響を強く受けていた。すなわち、SPTを受けた人を対象にしたメタ解析では分岐部病変クラスI、II とIIIそれぞれを有する歯の喪失は8、18と30%であったのに対し、今回の研究では、それぞれが、12.7%、34.0%、と55.6%と高くなっていたのである。」
(平成29年10月14日)
全体で、追跡期間中375被験者(19.8%)が臼歯を喪失した。FIのない、クラスI FI、クラスII FIとクラスIII FIのある臼歯のそれぞれ5.6%、12.7%、
34.0%と55.6%が喪失した。最初のプロービングポケット深さ(PPD)と臨床的アタッチメントレベル(CAL)は臼歯喪失と関連があった(p
< .001)。ベースライン時のFIのない臼歯に比較して、ベースライン時のクラスI FIは歯の喪失の1.73IRR(罹患率比)(95%
CI=1.34-2.23, p < .001)と関連があり、一方クラスIIーIII は3.88IRRの関連があった(95% CI=2.94-5.11,
p < .001)。
この研究は、定期的な歯周ケアを受けていない集団において、歯周分岐部病変によって影響を受ける臼歯の喪失は、そのリスクが増大するとのエビデンスを提供する。
(アタッチメントロス、分岐部、歯周炎、進行、歯の喪失)
「本研究(ベースライン時中等度歯周炎34.8%、重度歯周炎14.9%)で11年フォローした分岐部病変(FI)を有する臼歯のおおよそ18.4%が失われた。
ベースライン時分岐部病変と診断された場合、その後の臼歯喪失と関連があった。臼歯喪失の割合は分岐部病変の進行とともに増加していた(クラスI分岐部病変の上顎13.5%、下顎11.8%、クラスII分岐部病変の上顎34.8%、下顎
32.9% そしてクラスIII分岐部病変の上顎53.3%、下顎 60.0%)。
被験者の28%は何らかの歯周治療を受けていた(内容の詳細は不明)。おもしろいことにこの治療を受けたと報告のあった被験者群はそうでない群より、分岐部が原因での喪失の割合が高かった。もともと今回の対象集団はSPTを受けていないような集団である。そのような集団のうち治療を受けたという人なので、きっと何らかの症状があったと類推される。きっと病状の程度がひどいということなのだろう。
この研究は歯周治療SPTを受けていない被験者であるが、歯周治療を受けている集団ではどうだろう。5〜53年の追跡でFIを有する臼歯の生存は43〜100%と報告されている。2016年のシステマティックレビューでは10年までの追跡研究で分岐部が原因による臼歯の喪失リスクは1.53と評価されている(10〜15年観察ではOR=2.71)。
今回の研究では分岐部病変を有しない臼歯の喪失割合は上顎が5.2%で下顎が6.7%であった。一方、歯周炎患者で分岐部病変のない臼歯の喪失は上顎が9.7%、下顎が6.7%と報告されている。従って、分岐部病変の存在する臼歯では、歯の存続に対して歯周治療の影響は大きいが、ベースライン時に分岐部病変のない臼歯(多くは歯周炎のない患者)ではそうでもない、と類推される。
分岐部病変の程度が進めば喪失の割合がより高くなるのだが、SPTを受けている人に比べて今回の定期的な治療を受けていない被験者の歯の喪失は、この分岐部病変の影響を強く受けていた。すなわち、SPTを受けた人を対象にしたメタ解析では分岐部病変クラスI、II とIIIそれぞれを有する歯の喪失は8、18と30%であったのに対し、今回の研究では、それぞれが、12.7%、34.0%、と55.6%と高くなっていたのである。」
(平成29年10月14日)
No.422
A double-masked Randomized Clinical Trial (RCT) comparing four periodontitis treatment strategies: 5-year clinical results.
Preus HR, Gjermo P, Baelum V.
J Clin Periodontol. 2017 Oct;44(10):1029-1038.
この研究の目的は従来型の数週間でおこなうSRP、あるいは同日におこなうフルマウスディスインフェクション、さらに付加的にメトロニダゾール(MTZ)を用いる、あるいは用いない、治療法を患者群間で5年の臨床的治療成績に差はないとする仮説を検証することである。
3ヶ月の口腔清掃期間を経て、184人の患者が4治療法の一つに割り当てられた。(1)フルマウスディスインフェクション(FDIS)+MTZ、(2)FDIS+プラセボ、(3)スケーリングルートプレーニング+MTZ、と(4)スケーリングルートプレーニング+プラセボ。アクティブ治療の後、患者は半年ごとのメインテナンスを受けた。161患者が5年のフォローメインテナンスと診査を全うした。診査では臨床的アタッチメントレベル(CAL)、プロービングポケットデプス(PPD)、プラークと出血の有無が記録された。
メトロニダゾールは平均0.17mmで、統計学的には有意差はなかったが、最も高いCAL増加であり、FDISは平均0.12mmの増加であった。最も高いPPDは、先に相当する値はそれぞれ0.00と0.05mmであった。
単一レベルの解析は統計学的に有意な差を示すものの、その差はより適切な解析では追認できず、患者の副作用や環境への影響もあって、重度歯周炎患者に対する治療として、メトロニダゾールを推奨するにはあまりにも小さかった。
(抗生剤、フルマウスディスインフェクション、メトロニダゾール、歯周病、スケーリングルートプレーニング)
「SRPの効果をさらに高めるための付加的な治療として、抗菌剤の併用がよく知られている。そして、抗菌剤の併用にはSRP単独に比較して、小さな付加的効果があると、レビューの大多数が述べている。
フルマウスディスインフェクション(FDIS)については、通常の1/4顎ごとのSRPに比較しての優位性についての科学的な根拠は明瞭でないと、過去のシステマティックレビューでは報告されている。
この研究では、FDIS(二回に分けて同日)+MTZ、FDIS+プラセボ、SRP+MTZ、SRP+プラセボの4群でCALやPPDの変化を比較したが、統計学的な差がなかった。考察では統計学的な処理など書かれているが、あんまり興味なし。
トータルで見ると、4群に差がないのだが(要するに、FDISもMTZも上乗せ効果なし)ベースライン時7mm以上のポケットではMTZに、5mm以上のポケットでは臼歯でMTZに、上顎大臼歯と上顎小臼歯でFDISに付加的効果が見られるとのこと(いずれもPPDで統計学的に有意差あり。アブストにある有意差である。)。でもねその差はそれぞれ-0.18、-0.24、-0.32、-0.24、-0.28mm。臨床的にこれって価値あるかなあ。
MTZあんまし、という結論だったのだが、わざわざその投与すべきタイミングのことが書かれてあった。抗菌剤をSRPとあわせて投与するのだが、別の文献をひきながら、間接的なエビデンスから抗菌剤服用はデブライドメント完了の当日に開始すべきだと、記載されている。でも、今回の研究では効果なかったので、そのことにどれだけの意味があるのか。
著者らは歯の喪失を指標に解析した研究(もちろん5年経過症例)をjournal of periodontology でも報告しているが、そちらも差はなかったようだ。」
(平成29年10月9日)
3ヶ月の口腔清掃期間を経て、184人の患者が4治療法の一つに割り当てられた。(1)フルマウスディスインフェクション(FDIS)+MTZ、(2)FDIS+プラセボ、(3)スケーリングルートプレーニング+MTZ、と(4)スケーリングルートプレーニング+プラセボ。アクティブ治療の後、患者は半年ごとのメインテナンスを受けた。161患者が5年のフォローメインテナンスと診査を全うした。診査では臨床的アタッチメントレベル(CAL)、プロービングポケットデプス(PPD)、プラークと出血の有無が記録された。
メトロニダゾールは平均0.17mmで、統計学的には有意差はなかったが、最も高いCAL増加であり、FDISは平均0.12mmの増加であった。最も高いPPDは、先に相当する値はそれぞれ0.00と0.05mmであった。
単一レベルの解析は統計学的に有意な差を示すものの、その差はより適切な解析では追認できず、患者の副作用や環境への影響もあって、重度歯周炎患者に対する治療として、メトロニダゾールを推奨するにはあまりにも小さかった。
(抗生剤、フルマウスディスインフェクション、メトロニダゾール、歯周病、スケーリングルートプレーニング)
「SRPの効果をさらに高めるための付加的な治療として、抗菌剤の併用がよく知られている。そして、抗菌剤の併用にはSRP単独に比較して、小さな付加的効果があると、レビューの大多数が述べている。
フルマウスディスインフェクション(FDIS)については、通常の1/4顎ごとのSRPに比較しての優位性についての科学的な根拠は明瞭でないと、過去のシステマティックレビューでは報告されている。
この研究では、FDIS(二回に分けて同日)+MTZ、FDIS+プラセボ、SRP+MTZ、SRP+プラセボの4群でCALやPPDの変化を比較したが、統計学的な差がなかった。考察では統計学的な処理など書かれているが、あんまり興味なし。
トータルで見ると、4群に差がないのだが(要するに、FDISもMTZも上乗せ効果なし)ベースライン時7mm以上のポケットではMTZに、5mm以上のポケットでは臼歯でMTZに、上顎大臼歯と上顎小臼歯でFDISに付加的効果が見られるとのこと(いずれもPPDで統計学的に有意差あり。アブストにある有意差である。)。でもねその差はそれぞれ-0.18、-0.24、-0.32、-0.24、-0.28mm。臨床的にこれって価値あるかなあ。
MTZあんまし、という結論だったのだが、わざわざその投与すべきタイミングのことが書かれてあった。抗菌剤をSRPとあわせて投与するのだが、別の文献をひきながら、間接的なエビデンスから抗菌剤服用はデブライドメント完了の当日に開始すべきだと、記載されている。でも、今回の研究では効果なかったので、そのことにどれだけの意味があるのか。
著者らは歯の喪失を指標に解析した研究(もちろん5年経過症例)をjournal of periodontology でも報告しているが、そちらも差はなかったようだ。」
(平成29年10月9日)
No.421
Tooth loss in generalized aggressive periodontitis: Prognostic factors after 17 years of supportive periodontal treatment.
Graetz C, Sälzer S, Plaumann A, Schlattmann P, Kahl M, Springer C, Dörfer C, Schwendicke F.
J Clin Periodontol. 2017 Jun;44(6):612-619
この後ろ向き縦断的研究は大学現場で歯周治療後広汎型侵襲性歯周炎(GAgP)患者における歯の喪失に対するリスクと予後因子を評価することである。
57人(1,505歯)がサポーティブペリオドンタルセラピー17.4 ± 4.8 [range: 9-28] (SPT、T2)後と同様に、アクティブ歯周治療の前(T0)と後(T1)、で診査された。記述統計とCox比例ハザード共用異質性モデルが適用された。
全体では、98歯と134歯がAPTとSPTにそれぞれ失われ、患者一人当たり、1年当たりでは0.14 ± 0.18 歯であった。SPT期間中、3人の患者(5%)が≥10歯、 14人 (25%)が4-9歯、40人(70%)が 0-3歯それぞれ失った。全ての患者の1/3(n=19)が全く歯を失わなかった。SPT残存歯の平均PPDはT1 (3.5 ± 1.1 mm) からT2 (3.4 ± 1.1 mm)で安定していた。全ての残存歯の84%がT2時に安定あるいは改善した骨レベルであった。歯の喪失リスクは喫煙者(HR[95% CI]: 4.94[1.91/12.75])、上顎(1.94[1,16/3.25])、残存PPD各mmで(1.41[1.29/1.53])、分岐部歯(FI) (HR 4.00-4.44 for different degrees)そして動揺 (5.39 [2.06/14.1] for degree III)で有意に増加した。
提供された従来的な治療レジメ内ではあるが、GAgP患者ごくわずかの歯しか喪失しない。
(侵襲性歯周炎、メインテナンス、歯周治療、リスクモデル、歯の喪失)
「今回の研究と同様な報告は多く、そのほとんどで定期的なSPTの意義が強調されている。また慢性歯周炎(CP)の場合と同様に少数の患者が喪失歯の大部分を占めるという傾向が見られる。
AgPにおける歯の喪失は、系統だったアクティブな歯周治療とSPTが確立している限り、CPに比較しても同程度か低いとする報告まである。
歯のレベルでいうと、高いリスク因子は上顎歯列、残存するポケット、FI、そして歯の動揺度であった。患者レベルで言うと、喫煙(歯の喪失が4倍)と残存PPDが高いリスク因子であった。PPD>6mmが歯の喪失に対する高いリスクと関連していることを考えると、アクティブな歯周治療における成功の重要性が強調され、深い残存ポケットは定期的に再評価、そして再インスツルメンテーションされるべきであろう。
これまでの、しかし系統だった治療概念のもとで、コンプライアントAgP患者では歯は長期に渡って維持されうるので、早期の抜歯は慎むべきで、少なくともアクティブな歯周治療の終了まで延期すべきであろうと述べられている。」
(平成29年9月17日)
57人(1,505歯)がサポーティブペリオドンタルセラピー17.4 ± 4.8 [range: 9-28] (SPT、T2)後と同様に、アクティブ歯周治療の前(T0)と後(T1)、で診査された。記述統計とCox比例ハザード共用異質性モデルが適用された。
全体では、98歯と134歯がAPTとSPTにそれぞれ失われ、患者一人当たり、1年当たりでは0.14 ± 0.18 歯であった。SPT期間中、3人の患者(5%)が≥10歯、 14人 (25%)が4-9歯、40人(70%)が 0-3歯それぞれ失った。全ての患者の1/3(n=19)が全く歯を失わなかった。SPT残存歯の平均PPDはT1 (3.5 ± 1.1 mm) からT2 (3.4 ± 1.1 mm)で安定していた。全ての残存歯の84%がT2時に安定あるいは改善した骨レベルであった。歯の喪失リスクは喫煙者(HR[95% CI]: 4.94[1.91/12.75])、上顎(1.94[1,16/3.25])、残存PPD各mmで(1.41[1.29/1.53])、分岐部歯(FI) (HR 4.00-4.44 for different degrees)そして動揺 (5.39 [2.06/14.1] for degree III)で有意に増加した。
提供された従来的な治療レジメ内ではあるが、GAgP患者ごくわずかの歯しか喪失しない。
(侵襲性歯周炎、メインテナンス、歯周治療、リスクモデル、歯の喪失)
「今回の研究と同様な報告は多く、そのほとんどで定期的なSPTの意義が強調されている。また慢性歯周炎(CP)の場合と同様に少数の患者が喪失歯の大部分を占めるという傾向が見られる。
AgPにおける歯の喪失は、系統だったアクティブな歯周治療とSPTが確立している限り、CPに比較しても同程度か低いとする報告まである。
歯のレベルでいうと、高いリスク因子は上顎歯列、残存するポケット、FI、そして歯の動揺度であった。患者レベルで言うと、喫煙(歯の喪失が4倍)と残存PPDが高いリスク因子であった。PPD>6mmが歯の喪失に対する高いリスクと関連していることを考えると、アクティブな歯周治療における成功の重要性が強調され、深い残存ポケットは定期的に再評価、そして再インスツルメンテーションされるべきであろう。
これまでの、しかし系統だった治療概念のもとで、コンプライアントAgP患者では歯は長期に渡って維持されうるので、早期の抜歯は慎むべきで、少なくともアクティブな歯周治療の終了まで延期すべきであろうと述べられている。」
(平成29年9月17日)