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歯周病研究論文

歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p106(no.491-)

No.493 Free sugars and gingival inflammation: A systematic review and meta-analysis

J P Woelber , D Gebhardt , P P Hujoel
J Clin Periodontol. 2023 Sep;50(9):1188-1201.

 遊離糖類の消費は慢性非伝染性疾患と関連している。この研究の目的は、PICO方式による臨床疑問「遊離糖類は歯肉組織の炎症にどのようなインパクトがあるか」を基に、システマティックレビューとメタ解析を用いて、遊離糖類の消費が歯肉の炎症に及ぼす影響を探索することである。
文献レビューと解析が、介入のシステマティックレビューに対して、Cochrane Handbook
を基に行われた。遊離糖類と歯肉炎症に関して報告している対照臨床研究が含まれた。バイアスリスクはROBINS-IとROB-2で行われ、サイズ効果はロバスト分散メタ解析で評価された。
最初に同定された1777研究のうち、1768が除外され、歯肉炎症を測定した、209被験者の9研究が含まれた。これらの研究のうち6つが113被験者のデンタルプラークスコアについて報告している。遊離糖類制限なしと比較した場合、遊離糖類の制限は歯肉健康スコアの改善と(標準平均差 [SMD] = -0.92; 95% 信頼区間 [CI]: -1.43 to -0.42, p < .004; I2[heterogeneity] = 46.8) 、デンタルプラークスコアの低下傾向 (SMD = -0.61; 95% CI: -1.28 to 0.05, p < .07; I2= 41.3)と、有意に関連していた。遊離糖類の消費制限で観察された歯肉炎症スコアの改善は、種々の統計的欠測値補完を行っても頑健であった。研究数が限定されているので、いかなるメタ解析モデルも可能ではなかった。出版された年の中央値は1982年であった。バイアスリスクの解析は全ての研究に中等度のリスクを示した。
遊離糖類の制限は歯肉炎症の減少と関連していることが示された。システマティックレビューは PROSPERO (CRD 42020157914).に登録された
(歯肉炎、炎症、歯周疾患、スクロース、砂糖)
「ほとんどの歯肉炎は、プラークによって惹起されたものと考えられている。ところが、プラークが残存するのに、あるいはむしろ増加しているのに、歯肉の炎症が減少していることが示され、栄養学的な研究からその因果関係に疑問が投げかけられている。
つまり、栄養が歯肉炎症に対するリスク要因と推定される。
WHO の定義によれば、遊離糖類とは,製造業者,料理,消費者によって飲食物に添加されるもの、さらに蜂蜜,シロップ,果汁や濃縮還元ジュースに元来あるブドウ糖や果糖のような単糖類と、ショ糖や砂糖のような二糖類をさしている。この遊離糖類は、食物線維や微量栄養素がないので、複合炭水化物と比較して、食後高血糖、高インスリン血症、酸化ストレス、免疫の変化が生じ、炎症にもなりやすい。長期の多量および高頻度の砂糖消費は肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管系疾患やガンと関連している。WHOは、遊離糖類の摂取を、総摂取エネルギー量の5%あるいは約25g/日とすることを推奨している。
口腔疾患では、う蝕と砂糖摂取との関連が知られているが、歯周疾患と砂糖摂取の関連については、あまり知られていない。
今回明らかとなった、スクロースと歯肉の炎症との関連性について、そのメカニズムがいくつか考えられる。1つは、口腔バイオフィルムが砂糖を短鎖カルボン酸(乳酸、酪酸、プロピオン酸など)に代謝し、これら短鎖カルボン酸が歯肉に対して亢炎症作用を発揮するというもの。もちろん、砂糖消費によるプラーク形成の増加の関与もある。
砂糖消費によって引き起こされる全身的および血管への効果に起因するものも考えられる。遊離糖類消費は高血糖、酸化ストレス、血管炎症、と血管内皮機能不全を誘導することが示されている。そして、システマティックレビューでは急性の高血糖は自然免疫のいくつかの機能を、そして微生物に対する反応を変化させることが示されている。これらのことは、血糖値と歯周組織の炎症感の関連性を示した研究と合致する。」
(2023.10.17)

コーヒーブレイク

いつも人の論文を紹介してチマチマ言っているが、一応自分らも論文を書いている。で、いくつか世に出たのでまとめて掲げる。たいそに言ったが和文である。英文を仕上げる気力はなく、それは大学の先生にお願いした。
第一報は結構ケチョンケチョンだったが、リベンジの第5報は光栄なことに、2022年度
「日本歯周病学会会誌賞(JSP Journal Award)」https://www.perio.jp/member/award/journal.shtml
を頂いた。

島袋 善夫, 沢田 啓吾, 小清水 まみ, 品田 和子, 浅井 晴美, 溝口 あゆみ, 林 裕子, 塚本 明奈, 宮後 緑, 西原 風香, 西端 隆子, 島袋 美千代, 岩山 智明, 藤原 千春, 竹立 匡秀, 村上 伸也 (2021) 歯周炎新分類に基づく診断と歯の喪失との関連性評価 日歯周誌、63(3)129-142.

島袋 善夫, 竹立 匡秀, 沢田 啓吾, 小清水 まみ, 西端 隆子, 岩山 智明, 藤原 千春, 村上 伸也 (2022) 歯周炎新分類に基づく診断とメインテナンス期の歯周病に関連した歯の喪失未発生者率との関連性 日歯保誌、65(1)64-77.

竹立 匡秀, 島袋 善夫, 沢田 啓吾, 小清水 まみ, 品田 和子, 浅井 晴美, 溝口 あゆみ, 林 裕子, 塚本 明奈, 宮後 緑, 西原 風香, 西端 隆子, 島袋 美千代, 岩山 智明, 藤原 千春, 村上 伸也 (2022) 歯周炎新分類に基づく診断とメインテナンス期の歯周病に関連した歯の喪失発生率との関連性 日歯保誌、65(2)120-133.

Takedachi M, Shimabukuro Y, Sawada K, Koshimizu M, Shinada K, Asai H, Mizoguchi A, Hayashi Y, Tsukamoto A, Miyago M, Nishihara F, Nishihata T, Shimabukuro M, Kurakami H, Sato T, Hamazaki Y, Iwayama T, Fujihara C, Murakami S. (2022) Evaluation of periodontitis-related tooth loss according to the new 2018 classification of periodontitis. Sci Rep. 13;12(1):11893.

島袋 善夫, 竹立 匡秀, 沢田 啓吾, 小清水 まみ, 品田 和子, 浅井 晴美, 溝口 あゆみ, 林 裕子, 塚本 明奈, 宮後 緑, 西原 風香, 西端 隆子, 島袋 美千代, 岩山 智明, 藤原 千春, 村上 伸也(2022)歯周炎新分類に基づく診断とメインテナンス期の歯周炎に起因した,およびそれ以外の原因による歯の喪失発生率との関連性 日歯周誌、64(4)142-157

 

No.492 Longevity of teeth in patients susceptible to periodontitis: Clinical outcomes and risk factors associated with tooth loss after active therapy and 30 years of supportive periodontal care

Giancarlo Agudio Jacopo Buti Daniele Bonaccini Giovanpaolo Pini Prato Pierpaolo Cortellini
J Clin Periodontol. 2023 Apr;50(4):520-532.

 歯周炎に感受性のある患者において、30年フォローアップ期間中に歯列の維持における、サポーティブペリオドンタルケア(SPC)によって補足された、アクティブな歯周治療の効果を評価すること(i)、および歯の喪失と関連する予後因子を評価すること(ii)が研究目的である。
プライベートオフィスで、1984-1986間で治療を受け、レトロスペクティブにステージI-IVとグレードB-Cの歯周炎として分類された154人の歯周炎患者が、この研究に登録された。歯周組織評価の後、患者は非外科的歯周治療を受け、適応となった場合には歯周外科、矯正治療、と歯の固定が行われた。SPCは30年以上に渡って、3-6ヵ月ごとに厳格なリコールプログラムからなっていた。再発は縁下のルートプレーニングもしくは、フラップ手術で対応された。ベースライン時(T0)、アクティブな治療の終了時(T1)と25年後(T2)と30年後(T3)における、歯および歯周組織変数が測定された。一般化混合モデルが、歯の喪失と関連した予後因子と、歯の喪失に対する残存解析を評価するために解析された。
ベースライン(T0)時に154人の患者(4083歯)データが利用された。治療の価値がないと考えられた歯はアクティブな治療期間中 (160, 3.9%)と再評価時 (13, 0.3%; T1)に抜歯された。SPC25年後、154人3910歯のうち、140歯(3.6%) が、失われた (歯周組織の理由で、18人に24歯)。25年と30年間で、 20人の患者 (482歯)がドロップして、 61歯(2%)が失われた(歯周組織が理由で、14 人の患者で15歯)。結局、SPC30年に対して、201歯(5.1%)がSPC30年で失われた (歯周組織が理由で39歯))。一般化混合モデルは、ステージIIIあるいはステージIV歯周炎が、ステージIあるいはIIに比較して、SPC期間中に、より多くの歯の喪失と関連していたことを示した (OR = 2.10; p = .048)。広汎型歯周炎は限局型に比較して、統計学的に有意なOR = 3.24 (p = .016) を示した。SPC(T1-T3)、年齢(p = .011)、性別 (male; p = .038)、臼歯(p = < .001)、T0とT1 のポケット深さ(p = < .001)、歯の動揺度2(p = .018)と3(p = .050)、T0とT1時の骨欠損(p = < .001)と、根管治療の既往(p = < .001)と、クラウン(p = .009)が統計学的に歯の喪失との有意な関連があった。.
(i)歯周治療と厳格なSPCが30年間中等度/進行した歯周炎患者における、歯のほとんどを維持するのに有効で、(ii)年齢、性別、臼歯、ポケット深さ、骨欠損、と根管治療とクラウンの存在が、歯の喪失と関連した予後因子であった。
(長期、歯周病、歯周治療、サポーティブペリオドンタルケア、歯の保存)
「154人のメンテナンス患者最初の25年で、3910歯中140歯の喪失(3.6%)、30年では201歯の喪失があり、年間あたりでは0.04歯/患者と良好なメンテナンスと考えられる。
この三十年ではおよそ⅔にあたる患者86人(30年メンテナンス受けた患者は134人)が、歯を喪失しているので、これまでの報告でみられた特定の患者のみが歯を喪失するということにはならない。
糖尿病や喫煙者(7.9%)が少ないこと、局所的なリスク因子を丁寧に除去した結果であろうと、考察している。このことは喪失歯201歯のうち、歯周炎が原因の喪失が39歯であったことからも支持される。
歯単位では、初診時の動揺を伴う骨欠損、深いポケット、分岐部病変が、これまての報告と一致して歯の喪失との関連が見られる。しかし、たとえそうであってもSPCの期間中安定しているので、それが歯周炎が原因の歯の喪失が少ない理由の1つであろう。
根管治療や歯冠修復は歯の喪失と関連性がある。歯根破折、歯内偶発症、技術的な失敗などと関連している。」
(2023.7.13)

 

No.491 Periodontitis, Edentulism, and Risk of Mortality: A Systematic Review with Meta-analyses

M Romandini , G Baima , G Antonoglou , J Bueno , E Figuero , M Sanz
J Dent Res. 2021 Jan;100(1):37-49.

 歯周炎は、世界的に頻繁に死に至る慢性の非感染性疾患と、独立して関連が見られている。このシステマティックレビューの目的は歯周炎/無歯顎の人がそうでない人と比較して、全死亡と原因特異的な死亡のリスクが増加しているのかについて研究することである。1)アウトカムとして、全死亡あるいは原因特異的死亡との関連において、歯周炎あるいは無歯顎の曝露を評価している、および2)95%CIか未加工数によるハザード比、リスク比、あるいはオッズ比として、効果の評価を報告した、コホート研究が含まれた。2人のレビュー著者が、適格研究を独立して検索し、タイトルと要旨をスクリーニングして、全文解析をおこない、出版された報告からデータを抽出し、リスクバイアス評価を遂行した。不一致の場合には、三番目の著者が意見を求められた。研究結果はメタ解析を通じて要約された。総数57研究が含まれ、48コホート研究で571万人の参加者であった。歯周炎は全死亡 (risk ratio, 1.46 [95% CI, 1.15 to 1.85]) 、と心血管系疾患 (1.47 [1.14 to 1.90])、がん(1.38 [1.24 to 1.53])、冠状動脈性心疾患 (2.58 [2.20 to 3.03])、脳動脈疾患 (3.11 [2.42 to 3.98])による死亡の増加リスクと関連があったが、肺炎 (0.98 [0.69 to 1.38])では、関連がなかった。無歯顎(全てのタイプ)は 全死亡(1.66 [1.46 to 1.88])と、 心血管系疾患 (2.03 [1.50 to 2.74])、がん (1.55 [1.24 to 1.94])、肺炎 (1.72 [1.07 to 2.78])、冠状動脈性心臓病 (2.98 [2.43 to 3.65])、そして脳動脈性疾患 (3.18 [2.24 to 4.51])による死亡の増加リスクと関連があった。歯周炎とその最終像(無歯顎)は全死亡と原因別死亡のリスク増加と関連がある。
(疫学、口腔疾患、歯周病、歯周医学、リスク因子、全身疾患)
「歯周炎が”死”と関連があるという報告は少なくない。そのシステマティックレビューである。
重度の歯周炎は非感染性の慢性疾患の多くと関連性が指摘されている。その疾患は、心血管疾患、糖尿病、高血圧、肥満、慢性腎疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、がんなどである。歯周炎とこれらの疾患間に因果関係があるのだろうか。歯周炎はこれらの疾患と遺伝的、環境因子が、さらには慢性炎症経路が共有されている。歯周炎の発症、進行はポケット内細菌の共生バランスの失調の結果生じ、そして細菌の血流への侵入や局所での炎症性サイトカインの産生が全身の炎症負荷に影響を与えている。これらのメカニズムが歯周炎と多くの慢性非感染性疾患のリスク増加の関連性に寄与しているのではないか。」
(2023.6.15)
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