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歯周病研究論文

歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p017(no.053-055)

No.055
Fatty acid profiles in smokers with chronic periodontitis.

Buduneli N, Larsson L, Biyikoglu B, Renaud DE, Bagaitkar J, Scott DA.

J Dent Res. 2011 Jan;90(1):47-52.


我々は、タバコ喫煙がlipidAに存在する3-OH脂肪酸の変化を誘導し、その結果として細菌叢の炎症惹起能を減弱させることにつながるのではないかと仮説をたてた。

全唾液サンプルと口腔内の臨床歯周組織検査が、慢性歯周炎を伴う(22人の喫煙者、15人の非喫煙者)あるいは伴わない(14人の喫煙者、15人の非喫煙者)被験者から得られた。健康な被験者と比較して、歯周病群では多数の飽和3-OH脂肪酸類変化に寄与にする明確な差が見られた。嫌気性歯周病原性細菌と関連した長鎖脂肪酸における増加、特に3-OH-C(i17.0)
(146.7%,コントロール対比)では顕著であった。コンセンサス腸管由来LPS構造と関連した、3-OH脂肪酸における有意な減少(3-OH-C(12.0)
と 3-OH-C(14.0); それぞれの減少は 33.3% と15.8% ) は、慢性歯周炎に罹患した非喫煙者に比較して、喫煙者で著明であった。それゆえ、口腔細菌の炎症惹起能減弱と一致して、喫煙は唾液中におけるlipid-A由来3-OH脂肪酸プロファイルの特異的構造変化と関連する。これらの所見は、喫煙者では歯周病原性細菌による感染が増加しているのに、臨床的な炎症が減弱しているという臨床的な難問に対して、その解明に必要とされる構造的な情報を提供する。

(私の感想など:喫煙が歯周病を悪化させたり、治療効果を妨げたりと、リスク因子であることは間違いない。ただ、喫煙の何がどう悪くてそうなるのかのメカニズムの詳細は解明されていない。タバコの代表的な成分の一つにニコチンがある。生体の細胞にはニコチンレセプターがあるので、喫煙が生体側に種々の影響を及ぼしていることは簡単に想像できることで、喫煙と生体細胞との関連についての研究は多い。この論文は、喫煙が細菌側への影響があるとした仮説で、珍しいパターン。

ただ、唾液中の3-OH脂肪酸を検討しているのだが、この物質が細菌由来かどうか確認されておらず、また3-OH脂肪酸のプロファイル変化が、喫煙による細菌のLPSへ影響した結果であることも証明しているわけではない。さらにいうと、喫煙者で変化している3-OH脂肪酸がホントに歯肉の炎症減弱と関係しているのかも調べられているわけでもない。

本研究では、歯周病の有無、喫煙の有無で唾液中の脂肪酸プロフィールが異なり、これが歯周炎患者の喫煙者における歯肉炎症所見が弱いことと関係していると推測しているだけだ。今後も色んな研究から、この仮説を検証していくのだろう。)



炎症、lipid A、リポポリサッカライド、歯周炎、唾液、喫煙

(平成23年11月14日)


No.054
Tooth loss in aggressive periodontitis after active periodontal therapy: patient-related and tooth-related prognostic factors.

Baumer A, Pretzl B, Cosgarea R, Kim TS, Reitmeir P, Eickholz P, Dannewitz B.

J Clin Periodontol. 2011 Jul;38(7):644-51.


本研究の目的は、侵襲性歯周炎(AgP)患者にアクティブな歯周治療(APT)をおこなった後、歯の喪失に対する予後予測因子を歯レベルで評価することである。

AgPに罹患した84人がサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)を受けて、平均10.5年後に再評価された。2054本の歯がこのモデルに組み入れられた。フォローアップ期間と他の患者関連因子と同様に、ベースライン時骨喪失、歯の位置と歯種、分岐部病変(FI)、再生治療、支台状態を含む歯関連因子が歯のレベルで予後予測因子として評価された。歯の喪失に寄与する因子を同定するための統計学的解析に、マルチレベル回帰分析がおこなわれた。SPTの期間に、113歯(患者一人あたり1.34歯)が失われた。ベースライン時骨吸収、支台歯として利用されている場合、歯種、そして上顎という因子がSPT期間中の歯の喪失に有意に寄与していた。臼歯はAPT後の歯の喪失に対する最も高いリスクを示していた。されに、フォロー期間と患者に関連した因子、学歴が歯牙レベルで歯の喪失の有意な関連因子であった。フォローアップの有無と学歴と同様に、ベースライン時の骨吸収、支台歯、歯の位置と歯種が、歯レベルでAgP患者におけるSPT期間中の歯牙喪失に対する予後決定因子として見いだされた。

(私の感想など:考察では次のようなことが述べられている。慢性歯周炎における過去の文献では、SPT期間中の歯の喪失頻度が0.09-0.15(本/患者一人当たり/年)の範囲で報告されていることが多い。一方、侵襲性歯周炎でのその数値は、0.29と著しく高い値を報告するレポートもあるが、それは積極的な歯周治療を行っていない症例を含んでいるため例外的で、アクティブな治療を行う症例での報告は0.11-0.2(本/患者一人当たり/年)と慢性歯周炎の場合と同程度の数字が報告されている。従って侵襲性歯周炎であっても、慢性歯周炎を超えるほどに歯を喪失する訳ではない。今回の研究でも0.13(本/患者一人当たり/年)と同程度の数字であると述べている。また今回の研究では、平均10.5年のSPT期間中に歯を全く喪失しなかった人の割合が52.4%もあり、侵襲性歯周炎の人がSPT期間中に歯がどんどん抜けていくというわけではないことが示されている。

ちょっと意外だったのは、分岐部病変が歯の喪失リスクになっていないことだ。著者らもそれはわかっていたようで、統計学的に有意差がでなかったと述べている。)



支台歯、侵襲性歯周炎、骨吸収、分岐部病変、SPT、歯の喪失

(平成23年11月8日)


No.053
Subgingival ultrasonic instrumentation of residual pockets irrigated with essential oils: a randomized controlled trial.

Feng HS, Bernardo CC, Sonoda LL, Hayashi F, Romito GA, De Lima LA, Lotufo RF, Pannuti CM.

J Clin Periodontol. 2011 Jul;38(7):637-43


この研究の目的は、残存する歯周ポケットに対しエッセンシャルオイル(EO)を用いた洗浄を伴う歯肉縁下の超音波インスツルメンテーションの臨床的な効果を評価することである。

慢性歯周炎に罹患している64人の被験者がランダム化、二重盲検、パラレルそしてプラセボーコントロール臨床試験に参加した。全ての被験者は非外科的な歯周治療を受けた。再評価(ベースライン)の後、残存する歯周ポケット(ポケット深さ?5 mm)が、テスト処置(EOsで洗浄をおこなう超音波インスツルメンテーション)あるいはコントロール処置(ネガティブコントロール試薬で洗浄をおこなう超音波インスツルメンテーション)を受けた。プロービングポケット深さ(PPD)、歯肉退縮(R)、臨床的アタッチメントレベル(CAL)、プロービング時の出血(BOP)そしてプラークが、ベースライン時、4、12、24週に評価された。群間や経時的な変化間の差は一般線形モデルに従って解析した。

両群ともに有意なCAL獲得と同様に、PPDとBOPで有意な減少がみられた(p<0.001)。それにもかかわらず、研究のいかなる時期においても群間では差はみられなかった。最初の深いポケット(PPD ?7 mm)の解析でのみ、有意なCAL獲得(p=0.03)とPPD減少(p=0.01)がテスト群で観測された。

EOsの併用使用は深い残存ポケットで有意なCAL獲得とPPD減少を促進するのかもしれない。



(私の感想など:欧米ではプラーク抑制の洗口剤として0.1~0.2%クロルヘキシジンが用いられている。しかしそのクロルヘキシジンといえども、これを縁下の洗浄に用いた際にプラークの抑制効果がはっきりと確認される、というわけではない。それが、今回EOでは、深いポケットのみであるが、スケーリングに併用すると有効だったという。

しかし、今回の実験では1部位に5分のスケーリングをおこなっているのだp004No.019でも述べたがEOは商品名リステリンである。リステリンで1部位5分間のスケーリング。う~ん、どう、使用できますかねえ。)

エッセンシャルオイル、歯周病、歯周ポケット、超音波インスツルメンテーション

(平成23年10月31日)





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