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歯周病研究論文

歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p038(no.151-155)

No.155
Relationships Among Interleukin-6, Tumor Necrosis Factor-α, Adipokines, Vitamin D, and Chronic Periodontitis.

Teles FR, Teles RP, Martin L, Socransky SS, Haffajee AD.

J Periodontol. 2012 Sep;83(9):1183-91.

(この研究の目的は、治療前後で慢性歯周炎における血清アディポカイン、ビタミンDと臨床的および細菌学的パラメーター間の関連性を検索することである。

体重、身長、喫煙状態が56人の歯周炎患者で検索された。プラーク、歯肉炎、プロービング時の出血、排膿、プロービング深さ、臨床的アタッチメントレベルが、全歯で調べられた。各歯からの歯肉縁下バイオフィルムサンプルがチェッカーボードDNA-DNAハイブリダイゼーション法を用いて40菌種レベルについて解析された。インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子-α、アディポカイン、レプチン、レジスチン、とビタミンDがベースライン時に調べられた。治療後6ヶ月に被験者の一部(n=17)でサンプルの収集がなされた。血清サンプルはエライザ法と免役アッセイを用いて解析された。群間の臨床的、細菌学的そして血清中の因子がマンホイットニーU検定が行われた。因子内の関連は回帰分析で評価された。治療の効果はウイルコクソンサインランク試験で検討された。

アディポカイン/ビタミンD間とIL-6/レプチン間では正の相関が、IL-6/ビタミンD間とレプチン/ビタミンD間では負の相関が見られたが、血清中検体と臨床的あるいは細菌学的パラメーター間には関連性が見られなかった。性別と肥満度指数はアディポカインレベルと相関していた。歯周治療は臨床的および細菌学的パラメーターを改善させたが、血清検体レベルには影響を与えなかった。

アディポカインとIL-6は性別や肥満度指数に影響を受けていた。血清検体は歯周治療によって影響を受けなかった。

(アディポカイン、カルシトリオール、歯周デブライドメント、歯周炎)

(私の感想など:ここで検索しているメディエーター類のうち、アディポカインとビタミンDは抗炎症的に、IL-6とレプチンが炎症亢進的な作用を持つ物質と考えられている。それを表すかのように、慢性歯周炎患者の血清中では、IL-6/レプチンおよびアディポカイン/ビタミンDはそれぞれ正の相関を示し、IL-6/ビタミンDおよびビタミンD/レプチンは逆相関を示す結果であった。

しかし歯周ポケットを指標に歯周炎患者を3群に分けて検討すると、プラーク指数やBOPとは当然のように関連が認められたが、血清中の諸因子とは何ら関連がみられなかった。

歯周炎という病気が血清中の炎症性因子に影響を与えるのではないかと、これまでに歯周炎と血清中アディポカイン、レプチン、TNF-α、IL-6などの関連が調べられている。ところが、結果は関連ありとする報告がある一方で、関連なしとする報告もあるのである。今回の研究は後者に属する。また血清検体は臨床パラメーターだけでなく、細菌学的なパラメーターとも関連を見いだせていない。性別やBMIによっては影響を受けていたので、歯周炎の状態が全身的な炎症に及ぼす影響は小さいといえる。著者らは、歯周炎の状態をもっと均一なものとすれば、あるいはしかるべき因子を選べば、歯周炎の全身に及ぼす証左を見つけることができるかもしれない、と考察しているが。

治療をおこなっても血清検体レベルは変化ていない。介入試験でも同様だったのだ。歯周炎と全身、について色々言われるものの、エビデンスの蓄積はまだまだのようだ。

ビタミンDはPDが低い群で、より低い値を示していた(有意差はない)。他の因子ではそんな傾向を示しておらず、ビタミンDが唯一相関があるかもしれないという傾向を示している。これまでの結果も引用して考察ではこれをもってビタミンDが抗炎症的に働いているのではという論調だ。有意な相関は全く示されなかったのだが、どうしても歯周炎は全身的に影響を示す可能性がある、と言いたいようだ。)

(平成24年10月7日)


No.154

A comparative evaluation of the antibacterial efficacy of honey in vitro and antiplaque efficacy in a 4-day plaque regrowth model in vivo: preliminary results.

Aparna S, Srirangarajan S, Malgi V, Setlur KP, Shashidhar R, Setty S, Thakur S.

J Periodontol. 2012 Sep;83(9):1116-21.

はちみつは歯周病の抗感染治療に適した、強力で幅広いスペクトルを持った抗細菌作用を有している。この研究の目的は次のようでなことである。1)口腔細菌に対するはちみつの抗細菌作用を評価し、0.2%クロルヘキシジンと比較すること。2)インビボにおける抗プラーク効果をクロルヘキシジンと比較すること。

この研究は二つのパートからなる。インビトロ研究では、3種類の試験試薬、0.2%クロルヘキシジングルクロネイト、はちみつマウス洗口液、と生理食塩水、による6種類の口腔細菌に対する阻害効果が1,、2、 4、 8、 16、32、64、128、256と512 μg/mLの濃度で検討された。最小阻止濃度(MIC)が試験菌種の増殖を完全に阻害する最小試薬濃度として定義された。インビボ実験は4日間プラークの再増殖モデルを基にした二重盲検パラレル臨床試験でおこなわれた。20から24才の66人のボランティアがこの実験に参加し、プラークスコアがベースライン時と4日最終時点で比較された。クラスカル-ウォリス検定が有意差のために、マンホイットニーU検定が群の 対比較のために用いられた。グループ1,2と3の平均プラークスコアはそれぞれ1.77 ± 0.86、1.64 ± 0.90と3.27 ± 0.83であった。

はちみつ洗口液は6種類の試験細菌を効率よく抑制した。検討した全ての菌種において、クロルヘキシジングルクロネイト洗口ははちみつや生理食塩水と比較して最も低いMICであった。インビボの結果は、クロルヘキシジンとはちみつ洗口によってプラーク形成が抑制、減少していることを示していた。

はちみつは検討した口腔細菌に対し抗細菌作用を持っており、抗プラーク効果も併せ持っていた。

(抗細菌剤、クロルヘキシジン、デンタルプラーク、はちみつ、マウスリンス、最小阻止濃度)

(私の感想など:今回用いたセイヨウミツバチのはちみつだそうだ。pH 3.84で8.01%スクロースと記載されている。

口腔関連では歯肉炎の治療やガン患者の放射線治療後にみられる口腔粘膜炎治療に用いられる報告があるようだ。また好気性菌に対する抗菌作用はエビデンスがあるもののA.actinomycetemcomitansやP.gingivalisなどいわゆる歯周病原性菌に対する効果についての報告はないとのこと、つまり今回の研究が初出。

はちみつの何が殺菌効果を示すのか。1.過酸化水素、2.非解離性の有機酸(酢酸、乳酸、クエン酸などの有機酸は殺菌作用があり、特に非解離性は細胞膜の透過性がよく抗菌効果が強くなるらしい)、3.フラボノイド(ポリフェノールの一類で抗菌作用を持つ)、4.糖(はちみつには細菌の増殖を抑制できるほどの高濃度の糖が含まれる)、5.低いpHレベル(はちみつのpHは3.4から5.5程度で菌の生育には適さない)などがメカニズムとして考えられているらしい。著者らは4番目のメカニズムは否定的だとのべている。

糖濃度が高いのでカリエスや歯の脱灰を引き起こす可能性がある。これに対しては、はちみつはカリエスに関連した細菌の増殖を抑制し、今回の実験でもS.mutansを抑制している。また、はちみつに30分さらした歯にエナメル構造にエロージョンを起こしていないことをのべている。

ハチミツマウスリンスがホントに歯周病治療に有効なのか。追試験がでてくるのを期待しよう。

しかし、ハチミツhoneyが歯にいいなんて、駄洒落のような。)

(平成24年10月2日)


No.153
Survival of molar teeth after resective periodontal therapy – A retrospective study.

Lee KL, Corbet EF, Leung WK.

J Clin Periodontol. 2012 Sep;39(9):850-60.

他に処置を行わなければ抜歯が避けがたい、救うことのできない根を1本以上有する歯の寿命を延ばすために切除療法が行われるが、この研究の目的は、その臼歯切除療法の予後成績を検索することである。

切除療法を受けた149人の被験者について臨床記録が検索された。歯科履歴が記録され、リコール診査が行われた。コックス回帰モデルがおこなわれた。

149の切除療法のうち、132症例(88.6%)が歯周治療の理由でおこなわれた。切除療法を受けた89歯(59.7%)はリコール時(切除後平均10年)までに抜歯された。生存期間の中央値は74ヶ月であった。切除療法を受けた歯の生存期間が短くなることと有意に関連する因子は:切除時年齢、残存根の術前レントゲン的骨レベル<50%、術前の動揺度が2度以上、隣在歯と固定されていないあるいは支台歯として連結されていない状態であった。

切除時年齢が増加し、術前の動揺度が2度以上、残存根の術前レントゲン的骨レベルの減少を伴う歯の喪失リスクは増加していた。隣在歯と根切除歯の連結固定はその歯の生存に防御的な作用を提供するように思える。

(分岐部欠損、臼歯、歯周固定、歯周炎、比例ハザードモデル、歯の喪失、治療成績)

(私の感想など:分岐部を有する複根歯に対して、しばしば根切除術が行われる。今回の研究対象歯では上顎の第一大臼歯が最も多く、下顎の第一、第二大臼歯が続く。上顎の第一大臼歯では、その解剖学的な理由から、下顎の複根歯に適応されるような根分割が困難なために、切除療法の選択が多くなるのであろうと考察されている。

面白いのは、硬い食物(骨など)やスナック類などの摂食食習慣との関連も調べていて、これは関連性が見られなかったようだ。

抜歯に至った理由だが、75%は歯周病で次が破折15%だった。

術前の骨レベルが50%以下だとその生存年数中央値が2.1年と極端に短い。ただでさえ骨レベルが低いのにさらに切除となるとやはり予後は悪いようだ。

術前の状態(年齢、骨レベル、動揺度)はいかんともしがたいが、切除した後は積極的に固定をおこなうのが予後成績を向上させる秘訣のようだ。)

(平成24年9月29日)


No.152
All-cause mortality and periodontitis in 60-70-year-old men: a prospective cohort study.

Linden GJ, Linden K, Yarnell J, Evans A, Kee F, Patterson CC.

J Clin Periodontol. 2012 Oct;39(10):940-6.

この研究の目的は、60代と70代の西欧男性の均一な集団における前向き研究で、歯周炎と全死因死亡による死亡率との関連を検索することである。

北アイルランドから代表サンプルとして1400人の有歯顎男性(平均63.8歳、 SD 3.0歳)が2001年から2003年の間に網羅的な歯周組織診査を受けた。対象者は平均歯周アタッチメントロス(PAL)を基準に3群に分けられた。一次評価基準である、原因のある死亡はカプランマイヤー推定値とコックス比例ハザードモデルを用いて解析された。

トータルで、平均8.9年(SD0.7)のフォロー期間中に152人(10.9%)が死亡した:最も高いPAL(>2.6mm)群の73(15.7%)に比較して、最も低いPAL(<1.8mm)三分類群の37(7.9%)人が死亡していた。最も低いPAL群に比較して最も高いレベルのPAL群における死亡に対する非調整ハザード比率(HR)は2.11(95% CI 1.42-3.14), p < 0.0001であった。交絡変数(年齢、喫煙、高血圧、BMI、糖尿病、コレステロール、教育、婚姻状態 と心血管イベント既往歴)で調整したの地のHRは1.57(1.04-2.36), p = 0.03であった。

前向きコホート研究で、歯周組織アタッチメントロスが最も重度なヨーロッパ男性は歯周組織アタッチメントロスが低い集団に比較して死亡リスクが増加していた。

(全死因死亡、男性、歯周組織アタッチメントロス、歯周炎)

(私の感想など:歯周病自体は死に直結する病ではない。しかし、歯周病は人の寿命を左右するような全身疾患との関連性が言われて久しい。歯周病との関連性が報告されている全身疾患には、呼吸器系疾患、慢性腎疾患、関節リウマチ、認知障害、糖尿病、メタボリック症候群、ガン、脳卒中に関連するアテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患などなどがある。歯周病が重度になると、死亡率が上昇すると考えるのは尤もなことである。これまでにも口腔状態と死亡率についての報告はある。歯の数、歯周病、骨レベルなどとの関連である。

1400名の対象者を467人ずつPALを基準に3群(低、中、高PAL)に分けているんだけど、ベースライン時のプロファイルはとっても特徴的だ。高PALは歯数が最も少ない(低PALが22.1本に対して15.8本)、BMIも高く、喫煙についても喫煙歴の無い人が最も少なく逆に喫煙者が最も多い。糖尿病者率も高い。社会経済状態も上層が少なく、下層が多い。学歴年数もしかり。過去の冠状動脈イベントの発生率も高い。これらの項目は全て有意差ありだ。この集団の特徴をみると、歯周病だからというよりは、健康に気をつかわない(つかえない?)集団が歯周病を含めて色んな病気になっている、という雰囲気があるような気がする。

気になる死亡理由だが、最多は悪性腫瘍で43~49%、そして血管系病変17~22%、呼吸器系疾患が14~21%と続いている。

この研究ではPALを歯周病の指標にしている。PDを指標とすると関連が低くなるようだ。高齢者では歯肉退縮がすすんでいることが多いので、PALの方が歯周病の進行程度をより反映した数値なのかもしれないとのべている。

繰り返すが歯周病に罹患したからといって、死の恐怖を味わうことになるわけではない。でも調べると統計的な関連がみられる、ということなんですけどね。

(平成24年9月27日)


No.151
The periodontium of periodontitis patients contains citrullinated proteins which may play a role in ACPA (anti-citrullinated protein antibody) formation.

Nesse W, Westra J, van der Wal JE, Abbas F, Nicholas AP, Vissink A, Brouwer E.

J Clin Periodontol. 2012 Jul;39(7):599-607.

この研究の目的は非歯周組織やRA患者の滑膜組織と比較して、歯周組織中のシトルリン化タンパクの存在と局在(間質対上皮)を決定することである。

頬粘膜スワブに加えて、歯周炎、健康歯周組織とRA罹患滑膜組織サンプルが採取された。これらのサンプルではポリクロナール抗体(Ab5612)とモノクローナル抗体(F95)を用いてシトルリン化タンパクの存在が染色された。

歯周組織の間質では、コントロール間質(33%)と比較してシトルリン化タンパクの発現上昇が観察され、コントロールの発現は非歯周炎由来の炎症と関連していた。歯周組織上皮は常にAb5612陽性であった。注目すべきは、歯周炎に罹患している上皮でのみF95が陽性であった。頬粘膜スワブは全て、そして滑膜4組織中の3つで、Ab5612とF95両者ともに陽性であった。F95を用いたウエスタンブロットは歯周炎とRA罹患滑膜組織の両方で同様のシトルリン化タンパクの存在を示した。

歯周組織間質内では、シトルリン化は炎症に依存した現象である。歯周組織上皮内では、シトルリン化は生理的な反応である。RAに罹患した滑膜組織に生じるシトルリン化タンパクと同様に、歯周炎では付加的なシトルリン化タンパク生成される。シトルリン化を誘導する歯周炎は関節リウマチの病因に関与しているかもしれない。

(ACPA:シトルリン化タンパク、歯周炎、関節リウマチ)

(私の感想など:口腔健康とリウマチとの関係について最初に言及したのはヒポクラテスだそうだ。1本の歯を抜いたら関節痛が治った、と記述しているようだ(ホンマかいな)。

関節リウマチと歯周病の関連について

・リウマチ患者は歯周病の罹患率が高い。

・一方の疾患重症度は他の疾患の重症度と関連する。

・歯周治療をおこなうことで、リウマチ疾患活動度が減少する

などの報告がある。

さてこの歯周病と関節リウマチ、意外なところから接点が見つかり怪しい関係であることがわかってきたのだ。

・抗シトルリン化タンパク抗体(ACPA)はリウマチ特異的で病因との関連が指摘されている(というのは関節リウマチ患者の滑膜にはシトルリン化タンパクが生じており、このシトルリン化タンパクに対する自己抗体が産生されている。ただ、病因メカニズムの詳細は不明)。

・この抗体の抗原、すなわちシトルリン化タンパクは頬粘膜上皮でも発現がみられ、歯周組織でも存在する可能性がある。つまり歯周組織がACPAを誘導する場になっているのかもしれない。

・もともとシトルリンはコドンによって生成されるアミノ酸ではない。シトルリン化はペプチドアルギニンデアミナーゼ(PAD)によって生成される。ここで研究者を色めき立たせるのは、歯周病原性菌P.gingivalisがPADを有するという事実だ。

・さらにシトルリン化α-エノラーゼペプチドというシトルリン化タンパクが関節リウマチでの主要な自己抗原と考えられているのだが、この免疫主体ペプチドはPg由来のシトルリン化エノラーゼと82%の相同を有するという。

つまり滑膜で生じているシトルリン化エノラーゼに対するACPAは、歯周組織でシトルリン化エノラーゼを発現するPgによっても誘導されている可能性がるという。

・Pgに対する抗体価と関節リウマチ患者のACPAは相関するようだし、PgがPADやシトルリン化エノラーゼを介してACPA発現に関わっているとも想定される。

、ということがこの論文のおおよその背景だ。)

(平成24年9月22日)




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