0666750418
ご予約前の注意点

歯周病研究論文

歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p070(no.311-315)

No.315
Non-surgical and supportive periodontal therapy: predictors of compliance.

Delatola C1, Adonogianaki E, Ioannidou E.

J Clin Periodontol. 2014 Aug;41(8):791-6.

この研究の目的は非外科的およびサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)期間におけるコンプライアンスの予知因子を同定することである。

この後ろ向き研究では、開業医を受診した427人の新患における人口統計学的、歯科的、医科的データが収集された。データは従属変数として用いられた非外科的治療とSPTコンプライアンスによる統計モデルで解析された。

427患者のうち、17.3%が初期治療に同意せず、10.7%が初期治療を終了しないで、20.8%が初期治療を終了したがSPTには移行しなかった。218人のSPT患者のうち、56%が20ヶ月の期間の後には非受診者になり、33%が不規則な受診者で、10.5%が観察期間(5.5ー6.5年)の終了まで定期的な受診者であった。 患者が定期的な受診者であっても、平均18.1 ± 16.2ヶ月の後には不定期な受診者になっていた。一方、SPTをやめてしまった患者の49.6%は、受診しなくなるまでは定期的な受診者であった。単変量線形回帰モデルでは、喫煙はSPTコンプライアンスと負の関連があった(p=0.047)

今回の集団は低コンプライアンスであった。喫煙と歯周病の重症度は、それぞれSPTと初期治療の患者コンプライアンスの、有意ではあるが大きくない修飾因子であった。

(コンプライアンス、非外科的歯周治療、歯周炎、予知因子、サポーティブペリオドンタルセラピー)

「SPTの間隔は6ヶ月以内としている。それで、SPTに6ヶ月以上の診療間隔が生じた場合は不定期な受診者と分類されている。患者は軽度、中等度、重度に分けているが、プロービング深さが隣接面に6mmあるいはそれ以上の部位が、少なくとも(同一でない歯に)2カ所ある場合を重度と定義している。中等度はプロービング深さが5mmで、同様の定義だ。今回の研究の対象者は、軽度が9.4%、中等度が8.2%で重度が82.4%であった。

初診時に急性症状がある場合は、初期の治療を受ける正の予知因子となるが、最終的なメインテナンス全うには負の予知因子となる、という報告がある。今回は急性の主訴が、治療の開始や最終治療に至るかどうかとの関連はなかった。年齢やジェンダーについても、コンプライアンスと関係あるとも関係ないとも両方の報告がある。

定期的に受診をしていた、良好なSPT患者であっても途中で脱落しているので、継続とは難しいものだ。

ギリシアというお国のプライベートオフィス来院患者を対象にしている。それぞれのお国の事情などあるだろうが、なんとも寂しいSPT状況である。」

(平成26年8月8日)


No.314
Differences in bacterial saliva profile between periodontitis patients and a control cohort.

Belstrom D1, Fiehn NE, Nielsen CH, Kirkby N, Twetman S, Klepac-Ceraj V, Paster BJ, Holmstrup P.

J Clin Periodontol. 2014 Feb;41(2):104-12

歯周炎は多因子疾患で、その中でも歯肉縁下細菌が疾患の病原性に重要な関わりをもつ。この研究の目的は歯周炎が、唾液中の特徴的な細菌プロファイルと関連があるかどうかを決定することである。歯周炎患者からの唾液細菌プロファイルをコントロールコホート唾液のプロファイルと比較する事でこの目的を達した。

139人の慢性歯周炎患者から刺激唾液サンプルとコントロールコホート患者から447サンプルがHuman Oral Microbe Identification Microarray (HOMIM)を用いて解析した。サンプル中の約300細菌分類群/クラスターの頻度とレベル(平均HOMIMー値)が検索のパラメーターとして用いられた。グループ間の分類群/クラスターの差は、多重比較に対してBenjamini-Hochberg correctionによるマンホイットニーU検定にて解析された。主要素解析はHOMIMによって得られた細菌共同体プロファイルを可視化するために用いられた。

歯周病原性細菌と考えられている、Parvimonas micraやFilifactor alocisを含む、8つの細菌分類群と4つの細菌クラスターがコントロールコホートからのサンプルよりも歯周炎患者からのサンプルで、統計学的により頻度高く、そしてより高いレベルで同定された。これらの差は個々人の喫煙状態とは独立していた。

歯周炎はコントロールコホートとは異なった、特徴的な唾液細菌プロファイルと関連性があった。

(16S rRNA、HOMIM、細菌、バイオマーカー、歯周炎、唾液)

「今回は唾液サンプルで、Tannerella forsythia、Parvimonas micra、Filifactor alocisが歯周病患者の唾液サンプルで頻度高く、高いレベルで検出された。以前の歯肉縁下プラークをサンプルとした研究では、Parvimonas micra、Filifactor alocis、 Tannerella forsyhia、 Granulicatella adiacensaなどの細菌が歯周病と関連性があると報告されているので、縁下ポケットで増殖したこれらの歯周病と関連した細菌が歯周ポケットから溢れ出て、唾液中に多く検出されたのではないかと考察している。

しかしP.gingivalisやA.actinomycetemcomitansは唾液サンプルからは散発的に検出されるのみで、歯周病患者サンプルとコントロール間に差はなかった。過去の研究では唾液中のPgやAaが歯周炎と関連性を報告するものもある。結果の差について、スカンジナビア人ではPgやAaがまれにしか検出されないからかもしれないという考察だった。」

(平成26年7月28日)



No.313
Periodontal pathogens and associated factors in aggressive periodontitis: results 5-17 years after active periodontal therapy.

Meyer-Baumer A1, Eick S, Mertens C, Uhlmann L, Hagenfeld D, Eickholz P, Kim TS, Cosgarea R.

J Clin Periodontol. 2014 Jul;41(7):662-72

この研究の目的は、侵襲性歯周炎(AgP)患者における歯周病原性菌の存在とアクティブな治療(APT)後の疾患再発との関連性、さらに影響因子について評価した。

292部位(1/4顎で最も深い部位)でAPT後5-17年経過患者から細菌サンプルが採取された。リアルタイム ポリメラーゼ連鎖反応が、歯周病原性細菌Aggregatibacter actinomycetemcomitans、 Porphyromonas gingivalis、Tannerella forsythiaとTreponema denticolaを検出するために用いられた。単変量および多変量解析が病原性菌と疾患の再発、喫煙および付加的抗菌療法との関連性を評価した。

再評価時、 A. actinomycetemcomitansは6患者で (8.2%)、P. gingivalisは24人(32.9%)、T. forsythiaは31人 (42.5%)、そしてT. denticolaは35人 (48.0%)で検出された。再評価時T. forsythia とT. denticolaレベルの増加は多変量解析において疾患の再発と有意に関連があった (それぞれOR: 12.72, p < 0.001; OR 5.55, p = 0.002)。加えて、T.denticolaの低い患者に比較して高い患者では、臨床的アタッチメントレベル(CAL) ?6 mmの部位の百分率が増加していた(13.8% versus 3.2%, p = 0.005)。

再発患者では、T. forsythiaとT. denticolaの検出頻度およびカウントがより高く検出された。さらに、T.denticolaはCAL増加患者でより頻度高くみられた。

(Aggregaticacter actinomycetemcomitans、侵襲性歯周炎、付加的抗菌療法、歯周病原性、再発)

「今回検索した4種類の歯周病原性菌は、APTをおこなうことでほとんどの症例で5-17年後にも低いレベルであった。しかしごく少数の患者では高いカウントで、T.denticolaやT.forsythiaでは歯周病の再発と関連性が見られた。P.gingivalisについても、菌の存在と再発との関連性についての報告があるが今回の研究では慣例はみられず、過去の報告をサポートする結果ではなかった。

A.actinomcetemcomitansについてはAPTでそのカウントは減少するが、付加的な抗菌療法を組み合わせるとさらに有意に低いレベルになる。ただし、Pgと同様用に菌の存在と歯周病の再発の間には関連性は見られない。

喫煙者ではベースライン時ならびに治療後T.fosythiaの存在率や量が高く、T.denticolaでも同様の傾向が見られている。しかし、喫煙者で歯周治療の臨床効果が悪くなることとの関連性を示せるほどのデータにはなっていない。Pgについては喫煙者と非喫煙者間に、これまでの報告と同じく、差はなかった。

歯周外科処置の有無と歯周病原性細菌との関連性もなかった。外科処置をおこなうことが、これらの菌の長期定着には影響しないのかもしれない。

今回の研究ではベースライン時と治療後の細菌検査方法がことなるようで、今後さらに検討が必要とのこと。」

(平成26年7月25日)


No.312
Prepregnancy obesity and periodontitis among pregnant females with and without gestational diabetes mellitus.

Xie Y1, Xiong X, Elkind-Hirsch KE, Pridjian G, Maney P, Delarosa RL, Buekens P.

J Periodontol. 2014 Jul;85(7):890-8.

この研究は妊娠女性のうち妊娠性肥満と歯周炎との間に相関があるかどうかを検討することである。

ルイジアナ州バトンルージュ、ウーマンズ病院で以前に実施されたケースコントロール研究からのデータを用いて、後ろ向きコホート研究がおこなわれた。出生前管理で受診した際に159人の妊娠女性がリクルートされた。歯周組織の状態は平均妊娠31週時に歯科診査により評価された。歯周炎は ?4 mmのプロービング深さあるいは ?4 mmの臨床的アタッチメントロスがある部位が1カ所あるいはそれ以上存在する場合と定義された。

リスク比(RR)と95%信頼区間を評価するために、頑健な誤差分散をもつポアッソン回帰が用いられた。

妊娠性肥満は、低体重/正常体重女性と比較して肥満女性は1.7の高いリスクで、妊娠中に歯周炎と統計学的に有意な関連があった (RR = 1.7, 95% CI = 1.2 to 2.3, P <0.01)。妊娠性糖尿病(GDM)女性とGDMのない女性間においては、母性肥満と歯周炎間の関連に差はなかった。

妊娠女性では妊娠性肥満と歯周炎に正の関連がある。

(糖尿病、妊娠性、肥満、歯周炎、妊娠)

「先ほどに続いて、妊娠期の肥満と歯周病である。過去の妊娠時の肥満と歯周病との関連研究では、その有意差については相反しており、しかもいずれも横断的な研究である。それらに対し、今回の研究では妊娠前の肥満女性は、妊娠前に正常あるいは低体重の女性に比較して、妊娠中に歯周病となるリスクが高いということであった。

そのメカニズムの考察。肥満は亢炎症状態(急性期タンパク、亢炎症サイトカイン、白血球数の上昇)を引き起こす、亢炎症状態と認識されている。さらに免疫系を修飾し、感染に対する感受性を高める。肥満はインスリンの抵抗性とグルコース代謝を損なわせることでメタボリック症候群を誘導すると考えられている。インスリン抵抗性の低い過体重よりもインスリン抵抗性の高い過体重患者では重度歯周炎の高いリスクを示すために、インスリン抵抗性は肥満と歯周病の関連を媒介すると考えられている。」

(平成26年7月22日)


No.311
Association between obesity and periodontitis in pregnant females.

Lee HJ1, Jun JK, Lee SM, Ha JE, Paik DI, Bae KH.

J Periodontol. 2014 Jul;85(7):e224-31.

この研究の目的は妊娠前の過体重と肥満が妊娠期間中の歯周炎と関連があるかどうかを検索することである。

この研究では妊娠21から24週の315人の妊娠女性をしらべた。過体重と肥満は世界保健機関によって提唱された基準を基に定義された。歯周組織状態は臨床的歯周アタッチメントロス(AL)を測定することで評価された。肥満妊娠女性が歯周炎の程度に応じてリスクが増加するかどうかを検討するために、データは二群に分けられた。1)広汎型歯周炎と2)局所型歯周炎である。検索変数に対して低体重、正常体重、と過体重/肥満群内の比較は分類別の変数に対してはカイ二乗検定で、連続変数に対しては分散分析で解析された。多変量ロジスティック回帰分析が年齢、健康と口腔健康行動、と肥満情報に対して補正されて実施された。

年齢、分娩時年齢、歯周炎、歯周組織状態(同じ歯ではなく、4mm以上のALが、隣接面に2カ所あるいはそれ以上)が肥満度指数(BMI)と有意な関連があった(P<0.05)。全ての共変量に対して補正した後の歯周炎の補正オッズ比は、過体重と肥満女性 (BMI ?23 kg/m(2))に対して 4.57 (95% confidence interval = 2.30 to 9.07)であった。

妊娠前過体重/肥満と妊娠時女性の歯周炎との間には強い関連性がある。

(肥満度指数、肥満、過体重、歯周炎、妊娠、妊娠女性)

「肥満と歯周炎との関連性が指摘されるが、この関連は男性よりも女性で強い相関が認められる。ある報告では男性では差が見られないが、女性では肥満女性は正常な女性よりもオッズ比2.1で歯周病に罹患しやすくなっているという。この女性における強い関連は妊娠女性でさらに明瞭になるらしい。

肥満と歯周病は脂肪細胞から産生されるアディポカインとの関連で語られる。そして、妊娠は免疫系に影響を及ぼす妊娠関連のホルモンによって、全身的な炎症に対する感受性を増加させているのであろうと、考察されている。その結果肥満と妊娠が、歯周病の発症や進行に対して相乗的な影響を与えている可能性を考えている。」

(平成26年7月14日)

電話予約
ちょっと息抜き
ちょっと息抜き

ちょっと息抜きしませんか?過去にまとめたブログです。

HOMETEL歯周病アクセス