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歯周病研究論文

歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p069(no.306-310)

No.310
Routine Prophylaxes Every 3 Months Improves Chronic Periodontitis Status in Type 2 Diabetes.

Lopez NJ1, Quintero A, Casanova PA, Martinez B.

J Periodontol. 2014 Jul;85(7):e232-e240.

歯周炎と2型糖尿病(T2DM)は、特に歯科的ケアを受けない低所得層にとっては主要な健康問題である。歯周治療の低コストモデルとして、低所得層を対象としたようなコントロール研究はこれまでになかった。歯肉縁上の歯石やプラークの除去を含む歯口清掃は歯周炎の進行を抑止することが示されてきている。T2MDの歯周炎患者に対して、歯口清掃の効果を決定するためにコントロール臨床研究が企画された。

慢性歯周炎(CP)を有するT2MD患者26人とCPを有する非T2DM患者26人が選択された。歯周プロービング深さ(PD)、プロービング時の歯肉出血(ボP)、臨床的アタッチメントレベル(CAL)とプラーク付着面がベースライン時、初期治療後3、6、9ヶ月後に記録された。全ての患者はベースライン時と3ヶ月毎に口腔清掃指導と歯口清掃を受けた。T2DM患者において糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルはベースライン時と3ヶ月毎に測定された。

T2DM患者において、治療後3ヶ月後にPD、BOP、とプラーク付着に有意な改善が認められた (P = 0.001)。コントロールでは、ベースラインと比較して6ヶ月後の平均PDの有意な改善が見られた。 (P = 0.001)。それぞれの群でCALに有意な改善はみられなかった。群間で歯周パラメーターに有意な差は見られず、9ヶ月の研究期間で参加者にCPの進行はみられなかった。歯口清掃はHbA1cレベルに影響を与えず、HbA1c、治療前のメタボリック状態、CPの重症度に関連はみられなかった。

3ヶ月ごとの定期的な歯口清掃は歯周組織の健康を有意に改善させ、T2DMのコントロール不良患者およびコントロール良好な患者ともにCPの進行を抑制した。

(慢性歯周炎、口腔清掃、歯冠研磨、スケーリング、糖尿病、タイプ2)

「慢性歯周炎の治療では縁下のバイオフィルムを完全に除去することが治療の基本と言える。しかし、中等度以下の歯周炎では縁上のプラークコントロールを繰り返すことで、歯周ポケットや歯肉の炎症を減少させ、歯周炎の進行を抑制し、縁下細菌叢の組成を変化させうることが知られている。今回の研究でも、T2DMの罹患の有無にかかわらず、3ヶ月ごとのプラークコントロールとスケーリングは9ヶ月に至るまで有効で、臨床的な改善あるいは歯周炎の進行抑制がはかられている。

歯肉縁上のプラークコントロールをおこなうことで、歯肉の炎症消退が生じて歯周ポケットが減少するであろう。その結果として歯肉縁下細菌叢が変化したことが考えられる。しかし、縁上のプラークコントロールをおこなっても歯周ポケットの変化しなかった部位について、縁下細菌叢の変化を検討している報告がある。それによると、縁下の総細菌数やPgなどの比率が減少するようで、歯周ポケットの変化なしに縁上のプラークコントロールは縁下細菌叢へ影響するようである。

しかし縁上のプラークコントロールとSCは糖尿病患者の歯周組織臨床パラメーターを変化させても、HbA1cレベルには影響を及ぼさなかった。」

(平成26年7月6日)


No.309
The effect of periodontal therapy on glycaemic control in a Hispanic population with type 2 diabetes: a randomized controlled trial.

Gay IC1, Tran DT, Cavender AC, Weltman R, Chang J, Luckenbach E, Tribble GD.

J Clin Periodontol. 2014 Jul;41(7):673-80.

メキシコ系アメリカ人集団において、2型糖尿病(T2DM)の有病率は50%ほどの多さがある。この集団において、歯周治療がHbA1cに与える影響を明確にするために、ランダム化コントロール臨床研究が企画された。

154人の歯周炎に罹患したT2DM患者がこの研究で募集された。テスト群はスケーリングルートプレーニング(SRP)処置を受けて、コントロール群は口腔清掃指導を受けた。ベースライン時と処置後4-6週で、すべての歯周組織診査おこなわれた。HbA1cのためにベースラインと4ヶ月後に血液が採取された。

126人が実験を全うした。テスト群とコントロール群に対するベースライン時の平均 ± SD HbA1cはそれぞれ9.0 ± 2.3%と8.4 ±
2.0%であった。4ヶ月後テスト群とコントロール群の群間で、HbA1c減少(0.6 ± 2.1%と0.3 ± 1.7%)に 有意差は見られなかった。テスト群とコントロール群の群間で歯周臨床パラメーターの比較においては、テスト被験者で改善のある有意差が認められた。

テスト群とコントロールの群間でHbA1cの変化に統計学的な有意差はみられなかった。コントロール被験者と比較して、非外科的な歯周治療は歯周パラメーターの程度を大きく改善させた。

(HbA1c、ヒスパニック集団、歯周炎、スケーリングルートプレーニング、2型糖尿病)

「糖尿病と歯周病の二方向性にの相互作用についてはしばしば語られるところである。あるメタ解析では、非治療コントロールと比較して歯周治療による介入がHbA1c値を0.36(95%
CI 0.19、0.54)と報告している。また別のメタ解析ではSRPの後0.65%(95% CI 0.43、0.88)のHbA1c減少が報告されている。しかしながら、グリセミックコントロールに及ぼすSRPの影響については、相克的な結果がでているのが現状である。今回はメキシコ系アメリカ人のT2DM有病率が高いということで、歯周治療のHbA1cへの影響が検討された。

今回の研究において、歯周治療によって歯周組織のパラ-メーターは有意差を持って大きく改善した。しかし、これまでの報告と同程度にHbA1cは下がるものの、コントロールとの有意差は出なかった。それで考察は、と聞きたいのだが、残念ながら、、とりたてて述べることはなかった。」

(平成26年6月29日)


No.308
Efficacy of antimicrobial photodynamic therapy in the management of chronic periodontitis: a randomized controlled clinical trial.

Betsy J1, Prasanth CS, Baiju KV, Prasanthila J, Subhash N.

J Clin Periodontol. 2014 Jun;41(6):573-81.

この研究の目的は慢性歯周炎治療におけるスケーリングルートプレーニング(SRP)の付加的治療として、抗菌光線力学療法(aPDT)の可能性を評価することである。

単一施設ランダム化コントロール臨床研究では、未治療の慢性歯周炎患者90人(女性51人、男性39人)がaPDTを併用したSRP(テスト群)とSRP単独(コントロール群)治療に無作為に割り当てられた。臨床パラメーターと口臭は、手順を盲検化した歯周病専門医によって、治療を受けた後6ヶ月後に記録された。

群間および群内の統計学的な解析がおこなわれた。それぞれの変数に関して2群間の有意差はノンパラメトリックな順位共分散分析によって評価された。3ヶ月および6ヶ月時に評価された、テスト群におけるプロービングポケット深さと臨床的アタッチメントレベルはコントロール群に比較して有意な減少を認めた
(p < 0.05)。歯肉炎指数、歯肉出血指数においてはaPDTの2週間後と1ヶ月後のテスト群で統計学的に有意な改善がみられた (p <
0.01)が、3ヶ月後の歯肉炎指数と歯肉出血指数およびaPDT後2週時におけるプラーク指数 の改善は少なかった(p < 0.05)。また、口臭に関しては、1ヶ月後テスト群に有意な差が見られたが、長期には継続しなかった。

抗菌光線力学療法は短期的に慢性歯周炎の非外科的治療と管理にSRPの有益な付加的治療として効果があった。aPDTの長期の効果を評価するためにさらなる研究が必要だ。

(付加的歯周治療、口臭、メチレンブルー、歯周病、光線力学治療、ランダム化コントロール試験)

「テスト群とコントロール群間にPPDは3と6ヶ月で差があるのだが、1ヶ月後では差がない。これはベースライン時にPIには両群間に差があるため(テスト群2.0に対しコントロール群1.2)と考察している。なお、2週間後にはそのPIがテスト群0.8に、そしてコントロール群1.0になっている。

PPDもCALについても、テスト群とコントロール群間に差があるのに、口臭には差がない。このことについては、aPDTを繰り返しおこなうことで改善がみられるかもしれない、というコメントがある。などあるが、考察はめぼしい。」

(平成26年6月21日)


No.307
Periodontitis in patients with coronary artery disease: an 8-year follow-up.

Johansson CS1, Ravald N, Pagonis C, Richter A.

J Periodontol. 2014 Mar;85(3):417-25

この研究は確立した冠状動脈疾患患者において、歯周組織状態の先行評価が8年のフォロー期間中に、将来のCADエンドポイント(心筋梗塞、新規血管再生術、あるいはCAD関連死)を予知できるかどうか、そして歯周組織状態における変化が経時的に健康なコントロールに比較してCAD患者に差があるかどうかを検討する。

冠状動脈に重篤な狭窄があるために経皮的冠動脈形成術バイパス移植をおこなったCAD患者161人とCADのない162人のコントロールが2003年に調査された。8年後、CAD患者126人(男性102人、女性24人で平均68
± 8.9 才)とコントロール121人 (男性101人、女性20人、平均年齢: 69 ± 9.0才)が歯周組織について再調査された。3群(軽度、中等度、重度)の標準的な歯周病分類が用いられた。フォローアップ期間のCADエンドポイントは医学的記録から得られた。死因としてのCADは
スウェーデン死因調査から確認された。8年後のフォローアップ時点でのCAD関連エンドポイントがある場合あるいはない場合のCAD患者間に、ベースライン時の歯周炎の重症度に有意差はみられなかった。CADは歯周炎の発生率や重症度に影響を与えなかった。最終診査時点においてCAD患者とコントロール間に、歯周炎の有病率と重症度(P=0.001)、歯の数(P=0.006)、4-6mmのプロービング深さ(P=0.016)、プロービング時の出血(P=0.001)、とレントゲン的な骨レベル(P=0.042)のコントロール群に有利な有意差が見いだされた。

この研究結果からは、8年期間でCADエンドポイントとベースライン時の歯周組織状態間に有意な差は見いだされなかった。両群とも歯周炎の進行は緩やかであったが、コントロールと比較してCAD患者内における重度の歯周炎患者の高い比率は、8年のフォローで変化しないままであった。心筋梗塞、新規再血管再生法やCAD関連死を含むエンドポイントに関しては、歯周炎がCADに対するリスク因子か予知因子であると考えられるかどうかについて示すためには、さらなる長期の前向き研究が必要だ。

(アテローム性動脈硬化、冠状動脈疾患、冠動脈バイパス移植、経皮的冠状動脈形成術、歯周疾患、歯周炎)

「8年のフォロー期間中にCAD群は平均1本、コントロール群は平均0.5本抜歯に至っている。またベースライン時に、被験者には歯周組織の状態についての情報が知らされや口腔清掃についての勧告書も手渡されている。歯周治療はなされていないが、これらのことは被験者の歯周組織状態に少なからずの影響を与えた可能性が高い。事実、再検査時に歯周病の改善傾向がみられる。

今回の研究ではこれまでの研究で示されたような、歯周炎がCADに対するリスク因子であることを示すことはできなかった。前述のような事象が影響しているかもしれないし、症例数の少なさや観察期間の短さなども関与しているかもしれない。

こちらの結果は先の論文とは異なったようだ。」

(平成26年6月15日)


No.306
Periodontal status affects C-reactive protein and lipids in patients with stable heart diseasefrom a tertiary care cardiovascular clinic.

Flores MF1, Montenegro MM, Furtado MV, Polanczyk CA, Rosing CK, Haas AN.

J Periodontol. 2014 Apr;85(4):545-53.

心血管系疾患患者において、バイオマーカーのコントロールが歯周組織状態に及ぼす影響についてのデータは少ない。この研究の目的は安定した心疾患患者を対象に、歯周組織の炎症と組織破壊がC反応性タンパク(CRP)と脂質との間に関連がみられるかを評価することである。

この横断的研究は少なくとも6ヶ月通院する外来患者で、安定した冠状動脈疾患患者93人(男性57人、平均年齢63.5 ± 9.8才)を対象とした。実験計画に沿って作成された質問票を用いた後、すべての歯を対象として6部位/歯を、較正された歯周病専門医によって歯周組織診査がおこなわれた。CRP、脂質、と糖化ヘモグロビンレベルを決定するために、歯周組織診査の日に血液サンプルが患者から採取された。性別、肥満度指数、糖化ヘモグロビン、血糖降下剤の使用と喫煙に対して、コントロールされた様々な歯周組織と血液のパラメーター内の関連を評価するために、多重線形回帰モデルが適応された。

総体的に、サンプルは歯周組織の炎症と組織破壊の高いレベルを示した。補正しない平均中性脂肪(TGs)、超低密度リポタンパク質コレステロール、とグルコース濃度は重度歯周炎患者で有意に高かった。多重線形解析モデルが適応されたとき、臨床的アタッチメントロス
?6 mmの歯の数と重度歯周炎の存在は高CRP濃度と有意な関連がみられた。プロービング時の出血はTGs、総コレステロールと非高密度リポタンパク質コレステロールと有意な関連がみられた。

安定したCVD患者サンプルでは、歯周組織の炎症と組織破壊はCRPと脂質プロファイルのような心血管炎症マーカーと関連があった。

(ブラジル、心血管疾患、C-反応性タンパク、脂質、歯周炎)

「CRPと歯周炎の関連は健常人においても、急性心筋梗塞の患者においても関連が示されている。ここでは安定した心血管疾患患者でも同様の結果が得られるということ。さらに歯周治療によってCRP値の改善が見られるとする報告がある。あるいは歯周組織パラメーターがCVDのイベントと関連があるなどとする報告もある。この研究で歯周組織の破壊や炎症があれば、CRPや脂質などの心血管系マーカーの上昇がみられることがわかった。それゆえ、歯周病がCVDの再発につながるかも。と歯周炎と心血管系疾患との関連を肯定する結論だが、次の論文はどうだろう。」

(平成26年6月15日)

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