歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p104(no.481-485)
No.485
Associations between self-reported periodontal disease and nutrient intakes and nutrient-based dietary patterns in the UK Biobank
Sinead Watson , Jayne V Woodside , Lewis Winning , David M Wright, Murali Srinivasan, Gerald McKenna
J Clin Periodontol. 2022 May;49(5):428-438.
UKバイオバンクコホートの部分集団における、栄養素の摂取量と後天的な栄養素 ベースの食事パターン 、と歯周疾患リスクとの間の横断的な関連性を調べるこ とが本研究の目的である。
栄養素データは、16ヶ月に別々の機会に5回までの、24時間思いだし法により 収集された。口腔健康情報の収集にはタッチスクリーンアンケートが用いられ た。歯肉の疼痛や/あるいは歯の動揺があると報告された場合には、参加者は歯 周病のハイリスクと判断された。主成分分析が、20の栄養素から4つの栄養素 ベースの食事パターンを同定した。単一栄養素と栄養素ベースの食事パターンに 対する歯周病のオッズ比評価を行うために、ロジスティック回帰分析が用いられた。
総勢9476人の参加者(平均年齢56.2歳[SD8.0])が解析に含まれた。ビタミン B6、B12、CとE、葉酸、鉄、カリウム、マグネシウム、不飽和脂肪酸、と全糖が 歯周病の低リスクと関連があった。飽和脂肪の高摂取が増加リスクと関連があっ た。高微量栄養素と線維性食品によって特徴付けられた食事パターンは歯周病の 低リスクと関連があった。
中年から高齢者成人のこのサンプル内では、高微量栄養素と線維性食品の食事パ ターンが歯周病のリスク低減と関連があった。
(食事パターン、疫学、栄養素摂取、歯周病、歯周炎)
「今回の研究では、高糖摂取が歯周炎の低リスクと関連があったが、過去の報告 では逆の報告がある。今回の糖には、精糖に加えて、果物、野菜、ミルクなどに 含まれる自然糖分も含まれていたので、異なるタイプの糖をさらに分けて考える と異なる結果が生じるのかもしれない。
同じ事は多価の不飽和脂肪酸にも言える。過去の報告では、オメガ3脂肪酸は歯 周組織に恩恵をもたらし、オメガ6摂取が高値で、オメガ6とオメガ3のバラン スが悪くなると、歯周病リスクが増加していた。
βカロテンを含む8つの微量元素と食物線維高摂取パターンが歯周病の低リスク と関連したのだが、βカロテンや食物線維単独では歯周病リスクと関連性を認め なかった。食事パターンが重要で、栄養素の相互作用や組合せが大事なのかもし れない。
高脂肪と高糖分といういわゆる西洋型の食事パターン(加工食肉、赤肉、バ ター、高脂肪乳製品、卵、精製穀物)は歯周病との関連性がみられなかった。し かし、ある研究では肥満の男性に限定すると、関連性があった。」
(令和4年7月6日)
栄養素データは、16ヶ月に別々の機会に5回までの、24時間思いだし法により 収集された。口腔健康情報の収集にはタッチスクリーンアンケートが用いられ た。歯肉の疼痛や/あるいは歯の動揺があると報告された場合には、参加者は歯 周病のハイリスクと判断された。主成分分析が、20の栄養素から4つの栄養素 ベースの食事パターンを同定した。単一栄養素と栄養素ベースの食事パターンに 対する歯周病のオッズ比評価を行うために、ロジスティック回帰分析が用いられた。
総勢9476人の参加者(平均年齢56.2歳[SD8.0])が解析に含まれた。ビタミン B6、B12、CとE、葉酸、鉄、カリウム、マグネシウム、不飽和脂肪酸、と全糖が 歯周病の低リスクと関連があった。飽和脂肪の高摂取が増加リスクと関連があっ た。高微量栄養素と線維性食品によって特徴付けられた食事パターンは歯周病の 低リスクと関連があった。
中年から高齢者成人のこのサンプル内では、高微量栄養素と線維性食品の食事パ ターンが歯周病のリスク低減と関連があった。
(食事パターン、疫学、栄養素摂取、歯周病、歯周炎)
「今回の研究では、高糖摂取が歯周炎の低リスクと関連があったが、過去の報告 では逆の報告がある。今回の糖には、精糖に加えて、果物、野菜、ミルクなどに 含まれる自然糖分も含まれていたので、異なるタイプの糖をさらに分けて考える と異なる結果が生じるのかもしれない。
同じ事は多価の不飽和脂肪酸にも言える。過去の報告では、オメガ3脂肪酸は歯 周組織に恩恵をもたらし、オメガ6摂取が高値で、オメガ6とオメガ3のバラン スが悪くなると、歯周病リスクが増加していた。
βカロテンを含む8つの微量元素と食物線維高摂取パターンが歯周病の低リスク と関連したのだが、βカロテンや食物線維単独では歯周病リスクと関連性を認め なかった。食事パターンが重要で、栄養素の相互作用や組合せが大事なのかもし れない。
高脂肪と高糖分といういわゆる西洋型の食事パターン(加工食肉、赤肉、バ ター、高脂肪乳製品、卵、精製穀物)は歯周病との関連性がみられなかった。し かし、ある研究では肥満の男性に限定すると、関連性があった。」
(令和4年7月6日)
No.484
Pocket closure and residual pockets after non-surgical periodontal therapy: A systematic review and meta-analysis
Filippo Citterio, Giacomo Gualini, Moontaek Chang , Gian Marco Piccoli , Marta Giraudi , Valeria Manavella , Giacomo Baima , Giulia Maria Mariani , Federica Romano, Mario Aimetti J Clin Periodontol. 2022 Jan;49(1):2-14.
この研究の目的はポケット閉鎖(PC)に関する非外科的歯周治療(NST) の効果とポケットの割合と数における変化を解析することである。
2020年1月まで3つのデータベース(Pubmed, EMBASE, とScopus)が検索され た。全身的に健康な患者についてNSTの前後で、最低12ヶ月フォローし、PCある いはポケットデプス(PDs)の下図と割合に関してデータを示している前向き研 究が含まれた。ランダム効果メタ解析が行われた。
4610タイトルとアブストラクトがスクリーニングされた後、27研究が含まれた。 これらのうち、PCの63.9%が1研究による報告だった。 PDs ≤3 mmの割合が 39.06%から64.11%に変化して、加重平均の差(WMD)26.14% であった(p < .001)。このことは64.13%の健康な部位が相対的に増加することの説明となる。 PD ≥5 mm の平均割合は、治療前後でそれぞれ28.23%と11.71%であり、WMDは 15.50%であった(p < .001)。治療前後によるPDs ≥5 mmの数におけるWMD は 24.42であった (p = .036). NST後の残存PPD ≥5 の平均数は14.13であった。
NSTはポケットの大部分を根絶することができる。しかしながら、NST後の残存 ポケットは継続するかもしれず、将来の治療プランに対して注意深く考慮される べきであろう。
(非外科的歯周治療、ポケット閉鎖、残存ポケット、スケーリングルートプレー ニング)
「今回のメタ解析から取得されたデータから、PD>5mmの数と割合はそれぞれ、 39.1から14.13および28.23%から11.71%へと減少していた。この所見はNSTの有 効性を明確に物語るものである。歯周病の閾値をPD>5mmとするならば、NSTは ポケットのおおよそ2/3を根絶し、結果として≦4mmの部位が90%としている。過 去の報告でも、PCは全部位の74%でみられる、あるいはポケット全部位の62.4% は3ヶ月後にPCとなったことが示されている。
とはいうものの、PDs>5mmは残存するわけで、疾患のしんこうりすく があり、追加の治療の必要があろう。PD≧5mmが9カ所以上あると、患者レベルで 歯周病の進行と関連し、PD≧5mmは歯単位あるいは部位レベルで歯の喪失オッズ比 の増加との関連性が示されている。」
(令和4年5月3日)
2020年1月まで3つのデータベース(Pubmed, EMBASE, とScopus)が検索され た。全身的に健康な患者についてNSTの前後で、最低12ヶ月フォローし、PCある いはポケットデプス(PDs)の下図と割合に関してデータを示している前向き研 究が含まれた。ランダム効果メタ解析が行われた。
4610タイトルとアブストラクトがスクリーニングされた後、27研究が含まれた。 これらのうち、PCの63.9%が1研究による報告だった。 PDs ≤3 mmの割合が 39.06%から64.11%に変化して、加重平均の差(WMD)26.14% であった(p < .001)。このことは64.13%の健康な部位が相対的に増加することの説明となる。 PD ≥5 mm の平均割合は、治療前後でそれぞれ28.23%と11.71%であり、WMDは 15.50%であった(p < .001)。治療前後によるPDs ≥5 mmの数におけるWMD は 24.42であった (p = .036). NST後の残存PPD ≥5 の平均数は14.13であった。
NSTはポケットの大部分を根絶することができる。しかしながら、NST後の残存 ポケットは継続するかもしれず、将来の治療プランに対して注意深く考慮される べきであろう。
(非外科的歯周治療、ポケット閉鎖、残存ポケット、スケーリングルートプレー ニング)
「今回のメタ解析から取得されたデータから、PD>5mmの数と割合はそれぞれ、 39.1から14.13および28.23%から11.71%へと減少していた。この所見はNSTの有 効性を明確に物語るものである。歯周病の閾値をPD>5mmとするならば、NSTは ポケットのおおよそ2/3を根絶し、結果として≦4mmの部位が90%としている。過 去の報告でも、PCは全部位の74%でみられる、あるいはポケット全部位の62.4% は3ヶ月後にPCとなったことが示されている。
とはいうものの、PDs>5mmは残存するわけで、疾患のしんこうりすく があり、追加の治療の必要があろう。PD≧5mmが9カ所以上あると、患者レベルで 歯周病の進行と関連し、PD≧5mmは歯単位あるいは部位レベルで歯の喪失オッズ比 の増加との関連性が示されている。」
(令和4年5月3日)
No.483
Retrospective long-term analysis of tooth loss over 20 years in a specialist practice setting: Periodontally healthy/gingivitis and compromised patients
Timo Junge , Heinz Topoll , Peter Eickholz , Hari Petsos
J Clin Periodontol. 2021 Oct;48(10):1356-1366.
歯の喪失(TL)に影響を与える因子を同定するために、初診時歯周組織 の健康/歯肉炎(PHG)と歯周炎罹患患者(PC)とについて、専門医歯科で 15-25年フォロー期間中における歯の喪失を評価することである。
患者は、アクティブな治療(PC)後あるいは最初の診査(PHG)後240±60ヶ月 後に再診査された。PHG患者は歯周組織が健康あるいは歯肉炎で、PC患者は少な くともステージII歯周炎を呈していた。TL、患者に関連したアウトカムと、TLに 対するリスク因子が患者レベル(分類関連、性別、年齢、喫煙、プロービング時 の出血、学歴、平均受診回数/年)で評価された。
サポーティブペリオドンタルケアを定期的に受けている56人のPC患者 (女性12人、平均年齢49.1±10.9歳、ステージII10人、ステージIII/IV46人)は 38歯喪失した(0.03±0.05歯/年)。定期的な口腔予防処置を受けている、51人の PHG患者(女性23人、平均年齢34.5±12.4歳)は39歯を失った(0.04±0.05歯/年) (p=0.631)。PCとPHGの両群ともに視覚的アナログスケール測定[審美的 (p=.309)、咀嚼機能(P=.362)、口腔清掃(P=.989)、と全体の口腔健康イン パクトプロフィール(p=.484)]に関して、有意な差はみられなかった。フォ ローアップ開始時の年齢はTLに対してリスク因子であると同定された (p<.0001)。
(長期成功リコール、リスク因子、サポーティブペリオドンタルセラピー)
「健康な歯周組織/歯肉炎(PHG)と歯周炎とのSPT期間中の喪失歯数を比較 すると39歯と38歯で、ほとんど変わらんかった。APT期間中の喪失歯まで含める と、歯周炎患者はPHG患者より喪失歯数が多くなると述べられている、どれぐら い多いのかは記載されていないけど。
PC患者では、SPTを年1回だと、喪失歯は22歯、年に2回は16歯、年3回は0 だった。このSPT中の診療回数を頻度高くすれば喪失が減る傾向は前歯や臼歯で 効果的だったらしい。
今回の研究ではTL rateは0.04歯/患者/年でTrombelliやHelalらの報告の0.09 や0.12に比べると低い。また全TLと歯周炎起因の歯の喪失割合はそれぞれが 2.9%と0.8%で、Chabroneらの総説で示された9.5%と6.8%よりぐっと、低い。
PC患者のうち、ステージII、ステージIIIそしてステージIV被験者の喪失歯 はそれぞれ、0.2、0.6および2.75歯/患者とステージが上がると、増加していた。」
(令和4年3月22日)
患者は、アクティブな治療(PC)後あるいは最初の診査(PHG)後240±60ヶ月 後に再診査された。PHG患者は歯周組織が健康あるいは歯肉炎で、PC患者は少な くともステージII歯周炎を呈していた。TL、患者に関連したアウトカムと、TLに 対するリスク因子が患者レベル(分類関連、性別、年齢、喫煙、プロービング時 の出血、学歴、平均受診回数/年)で評価された。
サポーティブペリオドンタルケアを定期的に受けている56人のPC患者 (女性12人、平均年齢49.1±10.9歳、ステージII10人、ステージIII/IV46人)は 38歯喪失した(0.03±0.05歯/年)。定期的な口腔予防処置を受けている、51人の PHG患者(女性23人、平均年齢34.5±12.4歳)は39歯を失った(0.04±0.05歯/年) (p=0.631)。PCとPHGの両群ともに視覚的アナログスケール測定[審美的 (p=.309)、咀嚼機能(P=.362)、口腔清掃(P=.989)、と全体の口腔健康イン パクトプロフィール(p=.484)]に関して、有意な差はみられなかった。フォ ローアップ開始時の年齢はTLに対してリスク因子であると同定された (p<.0001)。
(長期成功リコール、リスク因子、サポーティブペリオドンタルセラピー)
「健康な歯周組織/歯肉炎(PHG)と歯周炎とのSPT期間中の喪失歯数を比較 すると39歯と38歯で、ほとんど変わらんかった。APT期間中の喪失歯まで含める と、歯周炎患者はPHG患者より喪失歯数が多くなると述べられている、どれぐら い多いのかは記載されていないけど。
PC患者では、SPTを年1回だと、喪失歯は22歯、年に2回は16歯、年3回は0 だった。このSPT中の診療回数を頻度高くすれば喪失が減る傾向は前歯や臼歯で 効果的だったらしい。
今回の研究ではTL rateは0.04歯/患者/年でTrombelliやHelalらの報告の0.09 や0.12に比べると低い。また全TLと歯周炎起因の歯の喪失割合はそれぞれが 2.9%と0.8%で、Chabroneらの総説で示された9.5%と6.8%よりぐっと、低い。
PC患者のうち、ステージII、ステージIIIそしてステージIV被験者の喪失歯 はそれぞれ、0.2、0.6および2.75歯/患者とステージが上がると、増加していた。」
(令和4年3月22日)
No.482
The impact of a "successfully treated stable periodontitis patient status" on patient-related outcome parameters during long-term supportive periodontal care.
Bertl K, Pandis N, Stopfer N, Haririan H, Bruckmann C, Stavropoulos A. J Clin Periodontol. 2022 Feb;49(2):101-110.
この研究の目的は長期サポーティブペリオドンタルケア(SPC)期間に治 療が成功して安定した歯周炎患者状態を達成することの重要性を評価することで ある。
この後ろ向きコホート研究は100人の歯周炎患者が含まれ、その患者はアクティ ブな歯周治療後7.5年以上SPCを続け、全体の遵守として評価された。
3つの患者関連のアウトカムパラメーターに対する種々の予知因子の影響が 評価された。(1)最終SPC時の罹患歯の数、(2)歯周炎が原因の喪失歯数、 (3)全ての理由による喪失歯数、である。
患者の1/5はアクティブな治療後に安定であると分類された。平均10.77 年のフォロー期間の後、24人が歯周炎で38歯を失った。不安定なPPSと最初のSPC で患者1人当たり罹患歯数の高い値、と期間中不適切な口腔清掃レベルは、最終 SPCに患者1人当たりのより多くの罹患歯数に対して、および歯周炎が原因のより 多くの喪失歯に対して、リスクが有意に増加した。しかしながら、SPCへの高遵 守は不安定なPPSのネガティブな効果を軽減するように思える。特に、歯周炎が 原因の歯の喪失に関してはそうである。
この研究ではステージIIIとステージIV患者を対象としている。今回対象 とした被験者では4人に3人が喪失がなく歯周病原因の喪失歯は患者1人あたり0.5 歯以下であった。
歯周炎起因で歯を喪失した患者のすべてがベースライン時にunstableに属 していた。ここで"stable"と表現している患者は、(1)全部位のポ ケットデプスが4mm以下、(2)BoPを伴う4mmポケットデプス部位が存在しない、 (3)全顎のBoPが10%未満、を満たす患者のことである。最初のSPC時にstable と評価されたのは100人中21人、最後のSPC時にstableは17人であった。
原因が歯周病に限定しても、すべての理由においても、歯の喪失に対す るPPS(すなわちstableかunstableか)の影響についての多変量解析ではともに 有意差を認めた。このことは全ての患者を対象にしても、また厳格な遵守者にお いても同じ結果であった。ところが厳格なSPC患者においては、歯周炎が原因の 歯の喪失に及ぼすPPSの影響は有意差を認めなくなっていた。すなわちSPC開始時 にunstableと判断されても、SPCに頑張って追従すれば、歯の喪失リスクは下が るということのようである。
(令和4年2月18日)
この後ろ向きコホート研究は100人の歯周炎患者が含まれ、その患者はアクティ ブな歯周治療後7.5年以上SPCを続け、全体の遵守として評価された。
3つの患者関連のアウトカムパラメーターに対する種々の予知因子の影響が 評価された。(1)最終SPC時の罹患歯の数、(2)歯周炎が原因の喪失歯数、 (3)全ての理由による喪失歯数、である。
患者の1/5はアクティブな治療後に安定であると分類された。平均10.77 年のフォロー期間の後、24人が歯周炎で38歯を失った。不安定なPPSと最初のSPC で患者1人当たり罹患歯数の高い値、と期間中不適切な口腔清掃レベルは、最終 SPCに患者1人当たりのより多くの罹患歯数に対して、および歯周炎が原因のより 多くの喪失歯に対して、リスクが有意に増加した。しかしながら、SPCへの高遵 守は不安定なPPSのネガティブな効果を軽減するように思える。特に、歯周炎が 原因の歯の喪失に関してはそうである。
この研究ではステージIIIとステージIV患者を対象としている。今回対象 とした被験者では4人に3人が喪失がなく歯周病原因の喪失歯は患者1人あたり0.5 歯以下であった。
歯周炎起因で歯を喪失した患者のすべてがベースライン時にunstableに属 していた。ここで"stable"と表現している患者は、(1)全部位のポ ケットデプスが4mm以下、(2)BoPを伴う4mmポケットデプス部位が存在しない、 (3)全顎のBoPが10%未満、を満たす患者のことである。最初のSPC時にstable と評価されたのは100人中21人、最後のSPC時にstableは17人であった。
原因が歯周病に限定しても、すべての理由においても、歯の喪失に対す るPPS(すなわちstableかunstableか)の影響についての多変量解析ではともに 有意差を認めた。このことは全ての患者を対象にしても、また厳格な遵守者にお いても同じ結果であった。ところが厳格なSPC患者においては、歯周炎が原因の 歯の喪失に及ぼすPPSの影響は有意差を認めなくなっていた。すなわちSPC開始時 にunstableと判断されても、SPCに頑張って追従すれば、歯の喪失リスクは下が るということのようである。
(令和4年2月18日)
No.481Long-term prognosis of teeth with class III furcation involvement
Peter Eickholz, Maren Runschke , Bettina Dannewitz , Katrin Nickles , Hari Petsos , Dorothea Kronsteiner , Bernadette Pretzl
J Clin Periodontol. 2021 Dec;48(12):1528-1536.
アクティブな歯周治療(APT)後、5年以上経過したクラスIII分岐部病 変(FI)のある歯の存続評価とと予後因子の同定が研究の目的である。
2004年10月から、ドイツのゲーテ大学フランクフルトの歯周病学講座でAPTを 終了した患者の全てのチャートがクラスIIIFIに対して審査された。APTが5年以 上の間に成し遂げられなければならなかった。チャートはベースライン時 (T0)、APT終了時(T1)、そして最終サポーティブペリオドンタルケア時(T2) に、クラスIIIFI歯のデータのために解析された。ベースライン時のエックス線 的骨吸収(RBL)と治療が評価された。
160人の患者(年齢54.4 ± 9.8歳、 82人の女性、 39人の喫煙者; 9人の糖尿 病、85 人のステージ III、75人のステージIV, 59人のグレードB, 101人のグ レードC)がクラスIII FIのある265歯を有していた。98歯(37%)が110、 78/137(中央値、下位/上位四分位数)ヶ月間で失われた。ロジスティック混合 モデル回帰と混合コックス比例ハザードモデルから、付加的全身的抗生剤投与と ほとんど歯を喪失しなかったこと(26% vs. 42%; p = .019/.004) 、およびRBL (p = .014/.024) とT1時の平均プロービングポケットデプス(PPD)がより多く の歯の喪失と関連していることが示された。
全身的抗生剤を併用した歯肉縁下のインスツルエンテーションはクラスIII分 岐部病変のある歯の保存には好ましいものである。ベースライン時のRBLとT1時 のPPDは長期の予後を悪化させる。
(分岐部クラスIII病変、長期の歯の保存、歯周炎ステージIIIとIV、全身 的抗生剤)
2004年10月から、ドイツのゲーテ大学フランクフルトの歯周病学講座でAPTを 終了した患者の全てのチャートがクラスIIIFIに対して審査された。APTが5年以 上の間に成し遂げられなければならなかった。チャートはベースライン時 (T0)、APT終了時(T1)、そして最終サポーティブペリオドンタルケア時(T2) に、クラスIIIFI歯のデータのために解析された。ベースライン時のエックス線 的骨吸収(RBL)と治療が評価された。
160人の患者(年齢54.4 ± 9.8歳、 82人の女性、 39人の喫煙者; 9人の糖尿 病、85 人のステージ III、75人のステージIV, 59人のグレードB, 101人のグ レードC)がクラスIII FIのある265歯を有していた。98歯(37%)が110、 78/137(中央値、下位/上位四分位数)ヶ月間で失われた。ロジスティック混合 モデル回帰と混合コックス比例ハザードモデルから、付加的全身的抗生剤投与と ほとんど歯を喪失しなかったこと(26% vs. 42%; p = .019/.004) 、およびRBL (p = .014/.024) とT1時の平均プロービングポケットデプス(PPD)がより多く の歯の喪失と関連していることが示された。
全身的抗生剤を併用した歯肉縁下のインスツルエンテーションはクラスIII分 岐部病変のある歯の保存には好ましいものである。ベースライン時のRBLとT1時 のPPDは長期の予後を悪化させる。
(分岐部クラスIII病変、長期の歯の保存、歯周炎ステージIIIとIV、全身 的抗生剤)
「 クラスI 分岐部病変のある臼歯に比較してクラスII病変のある臼歯は歯の喪失に対して 1.67倍、クラスIIIに対しては3.13倍と報告されている。クラスIII分岐部病変の 歯は歯の喪失割合が25%(OFD:オープンフラップデブライドメント)から65% (切除療法)との報告がある。
レビューでは、歯の保存割合が、root amputationあるいは amputation、root separationで38~94.4%、トンネリングが62~67%、OFDでは 63~85%、SRPが68~80%としている。そしてこのレビューはどの治療法に対し ても有意な優位性を決定できていない。FIのクラスを区別せず、追加の要因、す なわち治療後のRBLとPPDあるいはサポーティブペリオドンタルケアが歯の保存に は影響しているかもしれないと、結論づけている。」
(令和4年1月2日)
レビューでは、歯の保存割合が、root amputationあるいは amputation、root separationで38~94.4%、トンネリングが62~67%、OFDでは 63~85%、SRPが68~80%としている。そしてこのレビューはどの治療法に対し ても有意な優位性を決定できていない。FIのクラスを区別せず、追加の要因、す なわち治療後のRBLとPPDあるいはサポーティブペリオドンタルケアが歯の保存に は影響しているかもしれないと、結論づけている。」
(令和4年1月2日)
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