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歯周病研究論文

歯周病治療・歯周病研究 論文紹介p068(no.301-305)

No.305
The relationship between root concavities in first premolars and chronic periodontitis.

Zhao H1, Wang H, Pan Y, Pan C, Jin X.

J Periodontal Res. 2014 Apr;49(2):213-9.

この研究の目的は慢性歯周炎の臨床的指標と歯槽骨欠損に対する、第一小臼歯根面凹面の重要性を評価することである。コーンビーム断層撮影法による三次元的な再構築は、慢性歯周炎罹患患者99人の272本の第一小臼歯の近遠心部位に見られる、根表面の解剖と歯槽骨欠損のタイプを観察するのに用いられた。おのおのの部位における歯周臨床指標はフロリダプローブ社 (Gainesville, FL, USA)製を用いて測定された。

上顎第一小臼歯の近遠心根凹面の出現率はそれぞれ100%と39.3%であり、下顎ではそれぞれ42.5%と31.3%であった。患者の年齢と性別に関して凹面の異なったタイプの出現率は統計学的な有意差はなかった。根凹面のある第一小臼歯の平均プロービング深さと臨床的アタッチメントロスは凹面のない歯よりも有意に高い値をしめした(p<0.05)。プラーク蓄積は根の凹面の有無で有意差がみられた(p<0.001)。凹面のある歯の歯槽骨欠損のタイプは凹面のない根の歯槽骨欠損とは有意に異なっていた(p<0.05)。楔状骨欠損は凹面のない歯に優勢であった一方、クレーター状は凹面のある歯に見られた。

第一小臼歯の根凹面は歯周疾患や隣接面の歯槽骨欠損のタイプと関連があった。根の凹面は第一小臼歯の局所歯周病の進展に重要だと思われる。

(歯槽骨欠損、慢性歯周炎、コーンビーム断層撮影、第一小臼歯、根面陥凹)

「ここで用いられている分類では5つにわけられていて、タイプI:根に凹みのないもの、タイプII:エナメルから凹みが始まっているもの、タイプIII:セメントエナメルジャンクションから始まっているもの、タイプIV:セメントエナメルジャンクションの下で根尖側1/3から始まるもの、タイプV:根中央あるいは根尖1/3からはじまっているもの、である。

上顎の第一小臼歯の近心は、タイプIIが最もおおく35.7%で、ついでタイプIVが22.3%であり、遠心はタイプIがもっとも多く60.7%、ついでタイプIVが14.2%であった。下顎第一小臼歯の近心はタイプIが57.5%が最も多く、次はタイプIIとIVがともに11.9%であった。遠心はタイプIが68.7%が最多でタイプIVが15.0%であった。上顎の方が凹面の発生率が圧倒的に高く、根に陥凹がある場合には上下ともタイプIIかIVが多く、近心側ではエナメル部分から始まることが多くなる傾向のようである。

凹面のある歯ではプラークの蓄積もあり、クレーターの骨欠損の頻度が高くなっている。楔状、水平性、クレーター状骨欠損は近心の凹面なしがそれぞれ58.7%、27.2%、14.1%、凹面ありが31.7%、30.6%、37.8%である。遠心の凹面なしでは同様に57.9%、28.1%、14.0%、凹面ありでは31.9%、27.7%、40.4%であった。

上顎の第一小臼歯近心の根面陥凹は分岐部病変と同様にやっかいな輩である。」

(平成26年6月5日)


No.304
Compliance of cigarette smokers with scheduled visits for supportive periodontal therapy.

Ramseier CA1, Kobrehel S, Staub P, Sculean A, Lang NP, Salvi GE.

J Clin Periodontol. 2014 May;41(5):473-80.

この研究の目的はサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)の定期的な受診に対する喫煙者のコンプライアンスを評価することである。

1985-2011年の間にスイスベルンの Medi School of Dental Hygiene (MSDH)で、歯科口腔清掃治療を受けた患者の後ろ向きデータを用いて、定期的SPT受診に対するコンプライアンスの定量的および定性的解析がおこなわれた。

総数1336人は喫煙者32.1% (n = 429)、過去の喫煙者23.1% (n = 308)と非喫煙者44.8% (n = 599)であった。定性的には、非喫煙者あるいは喫煙歴のある者よりも喫煙者はSPTへの参加が有意に低く、その一方で
25.9% (n = 346)はSPTに一度も受診しなかった。2度あるいはそれ以上(n=883)受診した患者をさらに定量的に解析すると、平均%コンプライアンスは69.8%
(SD ±22.04)である一方、喫煙者は 67.0% (SD ±22.00)、喫煙歴のある者69.7% (SD ±22.03)、非喫煙者は71.7%
(SD ±21.92)であり統計学的に有意な差を呈した(p = 0.0111)。しかしながら交絡因子で補正した解析は加齢 (p = 0.0001、女性
(p = 0.0058)、長期のSPT間隔(p < 0.0001)と歯周病の重症度の強さ(p<0/0001)は喫煙者よりも%コンプライアンスにさらに大きな影響を与えた
(p = 0.7636)。

この研究から、定性的には喫煙者は非喫煙者あるいは喫煙歴のある者よりもSPTに参加することがより少ない傾向である一方、定量的には喫煙者が定期的なSPTへの参加した平均%コンプライアンスの低さは交絡因子に起因するかもしれないことが示唆された。

(アドヒアランス、コンプライアンス、非喫煙、歯周メインテナンス、喫煙、サポーティブペリオドンタルセラピー)

「過去の報告によるSPTの受診コンプライアンスは27%から72%と様々だ。SPTコンプライアンスに影響を与える因子には年齢、性、歯周病の程度、治療費用、アクティブな歯周治療の期間、患者の性格、喫煙などがある。

これまでの過去の報告を追随して、今回の研究でも喫煙者は非喫煙者や喫煙歴のある者に比較してSPTに対するコンプライアンスが低く、またSPTに2回かそれ以上SPTを受診した喫煙者の%コンプライアンスも同様に低かった。ただし、後者のサブグループを対象にした場合には、%コンプライアンスに及ぼす喫煙の影響は長期には存在しなかった。そのことから、臨床家は喫煙者であっても歯周組織の健康を維持させる為に、SPTからおちこぼれないように努力すべきと訴えている。」

(平成26年5月29日)


No.303
Influence of intra-pocket anesthesia gel on treatment outcome in periodontal patients: a randomized controlled trial.

Derman SH1, Lowden CE, Hellmich M, Noack MJ.

J Clin Periodontol. 2014 May;41(5):481-8.

この研究の目的は局所麻酔ジェルあるいは注射局所麻酔を用いておこなうスケーリングとルートプレーニング後の処置成績を比較することである。

全身的に健康な38人の歯周炎患者がランダム化、単盲検スプリットマウス臨床研究に含まれた。プロービング深さと臨床的アタッチメントレベルがベースライン時と治療後6週に記録された。別々の治療予約時に実施された処置は、2種類のタイプの局所麻酔下でおこなわれたスケーリングとルートプレーニングであった。用いられた麻酔はポケット内リドカインとプリロカインゲル(それぞれ2.5%)と注射局所麻酔(1:100,000
adrenaline)であった。最初の予約時に使用する麻酔のタイプはランダム化して割り当てられ、二度目の予約では別のタイプに変えられた。患者の痛みの感覚と麻酔の許容は質問票で記録された。

プロービング深さや臨床的アタッチメントレベルの変化について、応用した麻酔のタイプの影響は見られなかった(p > 0.05)。これらの所見は深いポケットに対してでさえ当てはまることであった。ジェル群は処置中の疼痛が有意に高かった。後ろ向きに検討すると患者の69%はジェルを選択した。

注射麻酔と比較して、麻酔ジェルの使用による処置成績が低下することはなかった。プロービング深さや臨床的アタッチメントレベルの同程度の有効な結果が見られた。処置の不快感が少し大きいにもかかわらず、患者の大多数は局所麻酔ジェルを選択した。

(麻酔、アルチカイン、リドカイン、歯周炎、プリロカイン、スケーリングルートプレーニング、処置成績)

「ベースライン時のポケット4mm以上は40数パーセント程度で、6mm以上は5~13%程度であるので、そんなにも重症ではない患者を対象としている。

ベースライン時からリコール時に減少した歯周ポケット(PD)は、PD<=3ではGel:1.19mmに対して注射麻酔:1.28mm、PDが4ー5では同様に1.73mmと1.85mm、PD>=では3.34mmと3.22mmであった。いずれも統計学的に有意差は無い。またアタッチメントレベルについても似たような傾向であった。つまり、処置前のPDに関わらず、ジェルでも注射でも、スケーリングルートプレーニングの効果は同程度であった。

患者は局所麻酔ジェルの方では処置中により多くの痛みを感じていたのだが、注射局所麻酔よりはジェル麻酔を選択することが多いという。注射って、それほどに嫌われているのね。臨床効果が同程度で、患者も局所麻酔ジェルを好むのであれば、麻酔ジェル下でスケーリングルートプレーニングをすれば良い、てなもんだが、痛がっている状態では処置しにくいなぁ。」

(平成26年5月12日)


No.302
Enamel matrix derivative in propylene glycol alginate for treatment of infrabony defects with or without systemic doxycycline: 12- and 24-month results.

Eickholz P1, Rollke L, Schacher B, Wohlfeil M, Dannewitz B, Kaltschmitt J, Krieger JK, Krigar DM, Reitmeir P, Kim TS.

J Periodontol. 2014 May;85(5):669-75.

この研究の目的は術後に全身的にドキシサイクリン(DOXY)を投与した場合と投与しなかった場合に、術後12および24ヶ月後の骨内欠損に対する再生療法を比較する事である。

2センター(フランクフルト アム マインとハイデンベルク)で57人のおのおのの患者に対し、1カ所の骨内欠損(深さ4mm以上)にエナメルマトリックスデリバティブを用いた再生治療が施された。ランダムに割り当てることにより、患者は1日200mgのDOXYかプラセボ(PLAC)を手術後7日間服用した。手術後12と24ヶ月後に臨床パラメーター(プロービング深さ[PDs]と垂直的臨床アタッチメントレベル[CAL-V])と標準化したレントゲンが得られた。欠落データは以後行われた観察に応じて取り扱いされた。

両群で57患者 (DOXY: 28; PLAC: 29)のデータが解析され (男性26人と女性31人; 平均年齢: 52 ± 10.2才; 喫煙者13人)、有意な(P <0.01) PD減少(DOXY: 3.7 ± 2.2 mm; PLAC: 3.4 ± 1.7 mm)、CAL-V獲得 (DOXY: 2.7 ± 1.9 mm; PLAC: 3.0 ± 1.9 mm)と骨の増生(DOXY: 1.6 ± 2.7 mm; PLAC: 1.8 ± 3.0 mm)が術後24ヶ月後に観察された。しかし、両群の差に統計学的な有意差はなかった(PD: P = 0.574; CAL-V: P = 0.696; bone fill: P = 0.318)。

骨内欠損に対して再生治療をおこなった後に、7日間200mg/日の全身的にドキシサイクリンを投与しても、 PLACに比較して術後12と24ヶ月後にPD減少、CAL-V獲得あるいはレントゲン的骨増生はみられなかった。このことは検出力の低さ、それゆえ偶然の結果に起因している可能性がある。

(歯槽骨、デンタルエナメルタンパク、ドキシサイクリン、歯周組織再生誘導法GTR、歯周、歯周病、創傷治癒)

「歯周病原性菌が歯周外科処置後の創傷治癒を損なうことが考えられるので、術後に抗生剤の投与が行われる。しかし、この抗生剤投与がエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)を用いた再生治療に対して、どのような付加的効果を与えるのかに関する情報はほとんどない。

骨欠損の深さや形態あるいは、術後の良好な創傷治癒(それゆえ創面の完全閉鎖が大事と語っている)が予後成績に影響を与えるようだが、抗生剤投与の有無については影響を認めなかった。今回はEMDだけについて検討したが、他の再生療法ではまた異なる結果が得られるのかもしれない。

差がなかったということ自体は意義ある結果だが、考察としては、議論はあまり深まらない。」

(平成26年5月3日)


No.301
A randomized controlled trial on immediate surgery versus root planing in patients withadvanced periodontal disease: a cost-effectiveness analysis.

Miremadi SR1, De Bruyn H, Steyaert H, Princen K, Sabzevar MM, Cosyn J.

J Clin Periodontol. 2014 Feb;41(2):164-71.

この研究の目的は歯周病残存病変の存在率と対費用効果に焦点をあてて、進行性歯周炎の治療における即時外科処置とスケーリングルートプレーニング(SRP)とを比較する事である。39人の患者(男性18、女性21、平均年齢54.6才)が口腔清掃指導を受けて。外科処置群(n
= 19)ありいはSRP群 (n = 20)にランダムに割り当てられた。治療群は12ヶ月までフォローされ臨床反応パラメーターと対費用効果に関しての評価をおこなった。治療の経済的効果を評価するためにチェアータイムが用いられた。

. Patients with residual pockets (?6 mm) a

両治療群は12ヶ月時点で残存ポケット1%未満を示す臨床成績に関して同等に効果的であった。SRPに比較した時、6ヶ月まで外科処置は患者に対して余分に746ユーロの支出を強いた。12ヶ月時点では、サポーティブケアに対する必要性が減少した結果として、46ユーロが相殺された。外科処置群の6人のみが全身的抗生物質が必要であったのに対して、SRP群の14人がそのような付加的治療を必要とした。

700ユーロは外科処置に代わってSRPをおこなうことで、平均700ユーロが節約されうるが、外科処置はサポーティブケアや全身的抗生剤の必要性が有意に減少する。

(アジスロマイシン、対費用効果、歯周炎、ランダム化コントロール臨床研究、スケーリングルートプレーニング、外科処置)

「目先のかわった論文だったのでどうしようかと思ったが、目を通したので、まあいいやと取り上げた。

外科処置は通常、非外科的処置の後に必要に応じておこなわれる。非外科処置をおこなっているために、外科処置時には歯肉の状態は比較的良好で処置がしやすいというメリットがある。しかし、進行性の歯周炎では外科処置に至ることが多いので、非外科的をすっ飛ばして、最初から外科処置対応でもいいんじゃないのか、という発想もある。処置の二度手間を省けるからだ。

臨床効果についてだが、両群間でポケットやアタッチメントレベルの改善に差は無かった(単根歯でおこなった同様の研究で、外科処置の方がポケットやアタッチメントレベルに改善がみられるという、過去の報告がある)。ただし、深いポケットの残存率には差があった。今回の研究では、6ヶ月時点で6mm以上のポケットが残存した場合に、抗生剤の投与と追加のデブライドメントを行っている。そのような部位は、SRP群で8.6%であったのに対し外科処置群では1.0%であった。症例で言うと前者が14人で、後者が6人となる。従って、SRPの方が二次的な治療の必要性が多く見られたということになる。初期治療処置にあたる6ヶ月までの費用はSRP群は525ユーロに対し外科処置群は1271ユーロ、サポーティブケアにあたる6ー12ヶ月ではSRP群は219ユーロに対し外科処置群では174ユーロとなっている(総コストにおける両者の差は700ユーロ)。また内訳的に言うと、初期治療ではSRPは100ユーロ/時間、外科処置は200ユーロ/時間、3ヶ月時点歯肉縁上プラークコントロール30分50ユーロ、6ヶ月時点の再評価30分50ユーロとなっている。ちなみに2009年の為替は、1ユーロは114から137円で、最近の為替は141円ぐらいだった。

臨床効果や処置に係る費用などの数値をみて、臨床効果と対費用効果についてどう感じますかね。」

(平成26年4月27日)

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